BABOKとは何か? 〜資格取得の条件〜
今後の会社の方針や個人のキャリアプランなどを検討した結果、BABOKという資格(正確にはCBAP®)の勉強をはじめることにした。
BABOKは日本ではまだマイナーな資格で、レベル3(最高レベル4まで)にあたるCBAP®の日本国内の認定者数( 2020年2月5日時点)もまだ108名(※グローバルでは9,931名)しかいない。
BABOK(ver2)は実は日本では2010年前後に一時ブームがあり、書籍や問題集なども発行されていたが、定着できずに終息していった。2015年にはver3へバージョンアップ。今年(2020年)07月にBABOK®ガイド・アジャイル拡張版が発行され、時代に合わせて着々と内容を刷新していっているものの、日本ではマーケットが小さすぎて、現時点で碌なテキストや問題集がない状況にある。
BABOKは今後の日本のビジネスを変革する潜在能力を持っている資格なのだが、知名度も低く、学習環境もあまり充実した状況にあるとは言えない。よって、今日はBABOKの持つ意味と資格を取得する上で集めた情報を共有する。
BABOKとは何か?
BABOKは、Business Analysis Body of Knowledgeの略で「事業分析のための知識体系」とでも訳せるだろう。ただ、「Business Analysis」は単にビジネスを分析するという意味以上に、ビジネスを業務に落とし込むまでの一連の手順・観点・概念を内包しており、そのまま「ビジネスアナリシス」と呼ぶ場合が多い。この「ビジネスアナリシス」を行う人のことを、BA(ビジネスアナリスト)と言い、欧米では一つの確立した専門職種として扱われている。
BABOKは要件定義のためのフレームワークと言われるが、実際はもう少し広く、ビジネスケースの作成など企画段階から関与して、プロジェクト化されるところまで道筋をつける役割を担っている。また、さらにもっと広い意味を与え、プロジェクト化後の進捗や課題を監視しつつ、システム移行や運用の定着、効果検証まで対象としているという人もいる。この考え方に沿えば、ビジネスとして発生した要件を工程ごとに管理し、企画を実現するまでのあらゆる役割を引き受けているとも言える。
何故、こうしたフレームワークが必要なのかと言うと、理由は2つある。
一つは、ビジネス環境の変化が今までにないほど大きく、激しいからだ。事業戦略の展開スピードを早め、柔軟化させていく必要があり、様々な要件に合わせて組織や業務を絶えずカスタマイズしていかなければならない。しかも、数千名・数万人が所属するような大企業で、これまで連携していなかったような組織や業務をつなげるのであり、その為の体系的なノウハウが要請されている。
もう一つは、今後のビジネスにシステムの介在が避けて通れないことにある。
ITは事業を効率化する半面、機能がブラックボックス化して簡単に変更できない特性を持つ。そんな中、必要な要求を実現するためには、システムの影響範囲を特定し、要件定義・開発・テストを経て広報し、場合により業務フローを変え、リリースし、運用・定着を図っていく。こうした変革は、ITの技術面や工程面に精通した上で、ビジネス・システム・業務の3つの観点から整合性を担保しなければならない。BABOKはそうした、システムを介在した要求実現のためのフレームワークでもある。(ただし、システムはあくまで手段でしかないので、検討の結果としてシステムが介在しないこともある。BABOKを使うとシステムを必ず使わないといけないということではない。)
資格の制度
BABOKを取得するために、制度を少し詳しくみていこう。
資格レベル
資格名 | レベル | |
ECBA® | 1 | エントリーレベル |
CCBA® | 2 | |
CBAP® | 3 | 2018年6月14日に日本語試験が開始 |
CBATL® | 4 | 最高レベル。英語のみ |
通常は、CBAP®(レベル3)を目指しておけば良いだろう。
CBAP®(レベル3)受験条件
- 過去10年でビジネスアナリスト(BA)として、7,500時間以上の実践的な経験
- 6つの知識エリアのうち4つ以上の知識エリアで900時間以上の業務経験があること
- 4年以内に35時間以上の専門能力の教育を受けていること
- 上司、クライアントまたはCBAP®資格保有者のいずれかによる2通の推薦状があること
- 「行動規範」(Code of Conduct)にサインすること
1,2:日本にはそもそもビジネスアナリスト(BA)という職種が一般的ではないが、事業開発や業務設計、システム導入プロジェクトに関与した経験など類する経験で代替できるのではないかと推察する。ここは、実際に受験する段になり、もう少し詳しくなったら別の記事にまとめたい。
3:IIBAが認定した教育機関でセミナーを受講する必要がある。
4:一定の確率で登録推薦人宛に推薦状の提出を求めてくるような仕組みで、全員が必ず推薦状を出す必要があるわけではないらしい。事前に上司などに許可を得ておくべきだが、スクールによってはセミナー講師に依頼できる場合もあるようだ。
受験料(2020/11時点)
出願:125ドル
受験費用:IIBA会員425ドル 非会員550ドル
※受験費用は英語受験だとあと100ドル安くなる
CBAP®(レベル3)更新条件
3年に1回
IIBA会員は85ドル、非会員120ドル
3年以内に60CDUs (※Continuing Development Unitsの略)
※CDUsは、資格を維持するために受けなければいけないカリキュラムの単位数のことを言う。
学習コンテンツ
公式ガイド
- ビジネスアナリシス知識体系ガイド(BABOK(R)ガイド)Version 3.0 – 2015年11月1日
- BABOK®ガイド・アジャイル拡張版 (日本語) オンデマンド (ペーパーバック) – 2020/7/8
今年(2020年)7月にアジャイル拡張版が出ているが筆者がIIBA日本支部に問い合わせたところ、アジャイル拡張版は試験範囲には含まれていない。今後改正があるかもしれないが、現時点では不明とのこと。
問題集
V3以降、日本語の問題集が出ていない。E-Learningなどでやるほかない。英語であれば下記の通り。
セミナー
- 株式会社TRADECREATE E-Project サービス
- KBマネジメント CBAP講座
- 富士通ラーニングメディア:CBAP(R)試験対策 (UZS46L)
- iTEC:CBAP(R)試験対策コース+BA概説講座(BABOK Ver.3対応)
価格帯は、e-Leaningで6万円〜、集合研修で15万円〜くらいが相場となっているようだ。
また、受験向けのセミナーではないものの、BABOKを実務に本格的に適用するための勉強会といった位置づけで、IIBAが開いている下記のような勉強会もある。今年(2020年度)の申し込みは既に終わっている。
- IIBA日本支部【実務者のためのBABOK®V3 勉強会(Online)】~BABOKを実務に役立てるために(シーズン4)~
学習の進め方
全て独学で、テキスト+問題集を繰り替えしやって受験と行きたいところだが、ver3の日本語の問題集もテキストもそもそも出ていない。アジャイル拡張版ガイドが今年発行されており、今後は試験にもどんどんと新しい概念が取り込まれていくことになる。Ver2時代のものはあるが、多分今はもう古いだろう。
なるべくお金をかけたくはないところだが、受験条件3「35時間以上の専門能力の教育」を満たすためには、どのみちIIBAが認定した機関でセミナーを受講しなければならない。オンラインセミナーでは5万円台から受講できる。セミナーに付随するeLearningなどで問題を繰り返し、公式ガイドラインと照らし合わせながら学習の強度を上げていこう。(また、PMP® 保有者はPDUにも加算できるものもあるので、賢く選んで行こう。)
そこそこ難しそうな資格ではあるが、学習時間100時間くらいが目安という記事もあったのでそこまでボリュームはないのかもしれない。
また、下記には合格体験記も掲載があり、個人的には一番参考になった。
本日は以上。