副業と起業の間 〜所得と確定申告〜

今日の記事はメモ程度の話。
昨年(2019年)の4月から働き方改革関連法案が施行され、大手企業でも副業を解禁するところが出てきている。今日は、簡単に副業に関するよくある誤解と注意点をメモしておこう。
ちなみに、副業なのであなたがサラリーマンとして主たる収入として給与を貰っていると仮定する。

『所得』20万円以下は確定申告が不要

もしあなたが、突然知人から21万円の金額で何かの仕事を頼まれたとすると、あなたは確定申告しなければいけないだろうか?
そんなイレギュラーな副収入があった場合、インターネットで調べると

『所得』合計が20万円以下の場合は確定申告が不要
(正確には「給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円以下の場合」)

と書いている。あちゃー、20万円超えちゃったな。確定申告面倒だなと思うかもしれないが、実は必ずしも申告する必要があるとは限らない。あなたの得た金額は「収入」21万円であって、「所得」21万円ではないからだ。

所得=収入 – 経費

であり、もし、その仕事にかかった経費が1万円よりも大きければ、所得は20万円以下になるため確定申告の必要はない。ちなみに「以下」なので20万円丁度の時は確定申告が不要。

もう一つ注意しなければいけないのは、基準となる金額は手取り額ではないと言う点だ。
例えば、副業で金額21万円の仕事を受けたとき、実際に手元に入ってくるのは源泉徴収税率10.21%を引いた18万8,559円となる。もし、経費が0だった場合、貰った本人は20万円超えていないつもりでも、所得は20万円を超えているので確定申告をしなければいけない。

開業届け

副業するにあたって開業届けは必要なのだろうか?
また、自分で確定申告をする場合も、予め開業届けを出しておかなければならないのだろうか?

結論から言うと、副業にあたって開業届けを出す必要はない。
また先ほど書いた通り、所得が20万円を超えているか否かが確定申告をしなければいけないかどうかの基準であり、開業届けの有無は関係ない。
開業届けは「国内において新たに不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業」を開始する場合に開始後1ヶ月以内に提出が義務付けられてはいるが、雑所得や給与所得として処理される副業には必要ない。
副業にもレベルがあるので、継続的に収入がはいってくるような本格的な「事業」になる場合は出しておいた方がいいが、たまに入ってくるくらいの仕事であれば考えないで良いだろう。何をもって(本格的な)「事業」なのかは別途記載する。

所得の種類

サラリーマンが副業で収入を得るパターン2つある。
一つはパートやアルバイトなど別会社から給与を得る場合。
もう一つは、原稿や講演など単発で仕事を請け負う場合。

確定申告時、前者ようにパート・アルバイト行う場合は「給与所得」として申告し、後者の場合は「雑所得」として申告する。

単発で一時的な仕事なら「一時所得」じゃないの?と思うかもしれないが、一時所得の定義は

営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得

のことを指し、要は懸賞や福引き・競馬や競輪の払戻金・生命保険の一時金など、営利目的ではなく、継続的でもないものを差すので、これには当てはまらない。
また、単発にならず、年数回でも仕事として受けているのなら「事業所得」になるのではないか?と思うかもしれない。

事業所得とは、

農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業を営んでいる人のその事業から生ずる所得

であり、判例(平成26年9月1日の裁決)によると以下の条件を満たしているものを言う。

• 自己の危険と計算において独立して行う業務か
• 営利性と有償性を有しているか
• 反復継続して遂行されて営まれているか
• 社会的地位が客観的に認められているか

事業所得にすると給与所得等との損益通算ができたり、青色申告特別控除や青色事業専従者の報酬を給与として扱えたり、様々なメリットがあるのだが、イレギュラーな依頼がたまたま続いたくらいでは事業とは認められない。また、売上が全くなくて経費を計上するためだけに事業所得と言い張っても社会通念上認められることはない。

とはいえ、曖昧な領域はどこにでも存在するもので、初めは片手間に受けていた仕事がいつの間にか継続的な受注につながって、本業よりも収益を上げるようになったと言う話も聞く話ではある。曖昧な部分は税務署に問い合わせるのがよいが、「自己の危険と計算において独立して行う業務か」という要件は事業が失敗した場合のリスクも負うのかという、意思や覚悟を問われている部分もある。なので、売上もしっかり上がって、ある程度事業として軌道に乗った(あるいは乗せようという意思がある)のであれば、開業届けを出して事業所得して確定申告をする・・・というのも、次に目指すべきステージとしては良いだろう。

まとめ

いろいろ細かく面倒なことを書いてしまったが、ざっくり言うと

  • 所得(収入から経費を差し引いた金額)が20万円以下なら確定申告不要
  • 所得20万円を超える場合パートやアルバイトなら「給与所得」、それ以外は「雑所得」で確定申告
  • 本格的に事業として営む場合は開業届けを出し、「事業所得」として確定申告すべし

と言うのが本日の結論。

税務の専門家ではないので、正確な情報は税務署か税理士、最寄りの青色申告会へ確認のこと。