はじめての確定申告③ 〜不動産所得と譲渡所得〜

前回、ほぼほぼ文章で説明していたが、「令和元年分所得税及び復興所得税の確定申告の手引き」 > 「(参考)申告や納税について知っておきたいこと」>「1. 所得の種類と課税方法」を参考に、もう少しわかりやすく表にしてまとめてみた。

今後、変更がある可能性もあるので正確な定義は最新の情報にあたって欲しいところだが、いずれにせよここでは課税方法には3つ考え方を押さえられればいい。

  • 総合課税:他の所得と丸っと合算して、累進課税をかけて所得税額を確定する(第一表へ記入)
  • 申告分離課税:他の所得と分離して個別に税金を計算し、所得税額を確定する(第三表へ記入)
  • 源泉分離課税:支払われる時点で所得税分が引かれており、確定申告が不要

所得の種類については説明を省く予定だったが、今後損益通算や青色申告の記事を書く上で「不動産所得」と「譲渡所得」に関しては知っておいた方がいいので、個別にピックアップしてまとめてみる。
(事業所得と一時所得と雑所得をどう区別するのかは以前の記事「副業と起業の間 〜所得と確定申告〜」を参照してほしい。)

不動産所得

自宅やマンションなど不動産を保有している人は多いだろうが、人によっては空いた物件を賃貸に貸し出している人もいるだろう。そこで得た賃料は不動産所得として計上する。
この時、事業的規模があれば青色申告することも可能である。事業的規模の基準は

  • 戸建の貸家であれば5棟以上
  • アパートなどの共同住宅であれば10室以上
  • 駐車場は「共同住宅1室=5台」と換算

である。
ちなみに、事業的規模になったからと言って、申告の欄が事業所得に変わるわけではない。
青色申告に添付する決算書も不動産所得用のものがあるのでそちらを利用する。(青色申告になるとどんな利点があるのかはまた記事を分けるのでここでは割愛する)

注意が必要なのは、賄い付きの寮などを経営すると役務の提供と判断されて事業所得(or規模により雑所得)になる場合もあるし、立体駐車場などのように管理者がいて、保管責任を伴う有料駐車場も事業所得(規模によっては雑所得)になる。ここら辺はややこしいので、迷う場合は税理士か税務署などに問い合わせをすると良いだろう。

譲渡所得

もう一点注意なのは譲渡所得だ。不動産の売買をして利益が出た場合に、不動産で得た所得だから不動産所得に記載するのかというと実は違っていて、譲渡所得の方に計上する。譲渡所得の計算式は、

譲渡所得=収入金額-取得費-譲渡費用

である。

例えば900万円のアパート区分所有1室を仲介手数料など合わせて100万円払って手に入れたとしよう。この部屋を運良く1,200万円で販売できたとする。(ここでは減価償却費などその他の費用は考えないこととする。)
この時の譲渡所得は

譲渡所得 = 収入金額1,200万円 - 取得費100万円 - 譲渡費用900万円 = 200万円

となる。
この200万円に対して所得税が掛かることになる。
不動産に関連するものが全て不動産所得というのではなく、家賃収入は不動産所得に、売買損益は譲渡所得になる。

株式の場合も同じだ。株式は家賃はないが代わりに配当がある。配当所得の扱いは説明しだすとそれだけで記事1本分かかるので割愛する(→詳しくはこちら)が、売買して利益が出た場合は譲渡所得に計上される。

申告分離課税の税率

参考までに、不動産と株式の譲渡に関しては、税率は下記の通りになっている。

ここらへんの税率の経緯や根拠は分からないが、不動産は投機目的に流動性が高まりすぎないように短期の税率を高めて、不動産バブルなどの発生を抑止しているのではないかと思われる。

重要度が低いので今回は取り上げないが、「退職所得」と「山林所得」は累進課税になっている。ただ、かなりの控除と特殊な計算式を用いていて、累進税率をかける以前の課税対象所得の額が小さくなるような工夫をされている。

総合課税は、合算して累進課税になる税率をかけて確定する。
源泉分離課税の場合は、所得税が引かれた状態で振り込まれるので特にこちらで意識することはない。
申告分離課税の場合は、所得の種類によりそれぞれ税率が異なる。
所得税額及び住民税は、それぞれ計算して出た金額を合計したものになる。

結局いくら税金をいくら払っているのかは、どんな所得があるのか…や年齢や家族構成、どんな控除を使えるかによって変わってくるので一概には言えない。
ただ、確定申告をすると各収入・所得が明確になるので、今後、確定申告書や住民税の計算書を時系列にまとめていけば、その人ごとの税率・税額がリアルに把握できるようになっていく。

確定申告は確かに面倒だが、自分の収入の種類や費用の内訳が明確になることで、ファイナンシャルプランを検討する基盤にもなるし、無駄な費用を削減する上でコスト意識も高まっていくだろう。

今回はここまで。