世界一わかりやすい企画書の書き方⑥ 〜 その他の注意点 〜

 

あとは細かい話が中心になる。五月雨式になるが、その他の注意点について説明する。

効果を具体的に表現する

企画を立てるのは、何らかの成果を得るためである。どんな成果(=効果)を見込むのかというのを定性面及び定量面で、具体的に表現する。

・定性面

ビジネスである以上、売上や利益・経費削減、あるいは市場占有率の向上など、効果を数字で表現するのは必須である。だが、このことは、定性的な成果や効果に関してなほざりにしていいということを意味しない。具体的な根拠や裏付けのない企画はもってのほかだが、鉛筆を舐めながら帳尻を合わせるためだけに作った数字よりも、しっかり丁寧な説明の方が説得力がある。
システム導入企画などでは、「業務効率化」という言葉がよく使われるが、わかったふうに説明した気になるのではなく、どのような機能がどう作用して、誰の業務をどう効率化していくのか・・・など筋道をしっかりと記述したい。
ここら辺は、これまでの記事に書いてある通り、正しい言葉を使い、要件をしっかり掘り下げて真の効果にフォーカスしていきたい。

・定量面

定量面も、「程度・時間・状態」を客観的な数値として提示する。
これは、数値であれば良いだけではなく、要素分解してより具体的に掘り下げていく。例えば、「売上年間20%UPの効果」と表現するのはあまり良い表現ではない。仮に売上を下記のように分解できるとすると、

売上= (既存客+新規客-流出客) x 来店頻度 x 点数 x 単価

と表現できる。
この時、「流出客を2割減らし、来店頻度を1割上げることで、売上を2割向上させる」というように、数値のどこに効かせるのかをしっかりと記述することで、企画に対する本気度と現実感が増していく。ある程度の規模のある職場では、KPIを使っているのでそのKPIの導出式などを参考にするのも手である。
こうした要素分解が正しければ、実際に企画が走り始めた時の効果の測定と振り返りもしやすくなる。

QCDSの優先度を設定する

企画が承認され、プロジェクト化されて走り始めるとほぼ100%の確率で品質(Q)、コスト(C)、納期(D)、スコープ(S)の何かに問題が発生する。よって、企画の段階で何を優先するかということを決めておく。例えば、

  • 納期が遅れた場合、お金をかけ、人員投入してでも間に合わせるのか?
  • コストが超過する場合、何らかのスコープを落とすか?
  • 当初予定していた品質レベルが担保できない場合、納期を遅らせても品質向上に取り組むのか?

などである。はじめから失敗を想定するなんて・・・と思われるかもしれないが、QCDSの優先度を設定することでその企画で何をもっとも重視しているのかが関係者にとって明確になってくる。

要件の優先度/期限を明確にする

大抵、企画というのは複数の要件(やりたいこと)によって構成される。あるいは分解できる。
以前挙げたリフォームの例で言えば、「高齢者が1階の各部屋を安全かつ安心して移動&居住できること」という要件の他に、「高齢者居室が夜寝ても冷えないようにする」という要件があった。義両親が安全かつ安心して暮らせることが最終的な目標であり、そういう意味では同じ要件だが、レベル感を付ければやはり前者の方は必達事項であり、後者の方はできればくらいのものになる。
よって、要件も優先度の高いものから記述し、分けられるならば<MUST>と<WANT>に分けた方がいい。やはり、制限がなければやりたいことはいくらでも出てくるが、現実的にできることは少ないので、最低限何が達成されなければならないのかを明確にしておくべきである。

そして、要件ごとに期限を明確にしておく。
企画全体の期限の設定は割と意識されやすいが、個別の要件まで意識するケースは少ない。
だが、企画が走り始めると、全てに同時に実現することが難しい局面が当然のように出てくるし、また、この要件が実現できていなければ、次の要件が実現できないなど、要件によっては依存関係が生じる場合もある。
要件ごとに期限を検討すると、実現手順など構造的かつ多角的に企画を検討することにもつながっていく。

本日は、以上となる。