世界一わかりやすい企画書の書き方① 〜ある事例〜

最近、契約先「企画書の書き方」をメンバーにインプットしてくれというオーダーをもらった。
その時に作ったメモを、ざっくりとまとめてみた。

企画書の書き方なんて、あって無いようなものもある。
以前、たまたまフリーのTVプロデューサーの企画提案に同行することがあったが、TV局のロビーのプラスチック製の簡単な丸テーブルを囲んで、A4二枚くらいのペラペラな企画書で企画意図とおおよその予算を説明しておわり。わずか、30分くらいの打ち合わせで1,500万円くらいの受注を決めていた。
もちろんTVプロデューサーの名前とこれまでの実績、そして局側との信頼関係、あるいは既にある局側のフォーマットなど踏まえての事なのだろう。企画は海外ロケなども含むドキュメンタリーで、事前調査、撮影スタッフの旅費交通費、現地スタッフ謝礼、ナレーション、音入れ、編集、事務処理などを併せると足が出ることもあるそうで、額が大きいかというとそうでも無いとの事。
とは言え、企画の観点から言うとこんなんで通ってしまうんだ、と言う意味で衝撃ではあった。

私が主戦場とする、IT系プロジェクトでは一度システムが導入されれば、数年はそれを使っていかなければいけない類の内容が多い。よって企画から要件定義まで3回ほど見積もりを行って、費用対効果の確度を高めてようやく開発に入るような進め方をする。ここら辺は業界によってプロセスも求められる精度も違うことから、一言「企画書」と言っても、その書き方は千差万別である。世の中に「企画書の書き方」的な本があっても、なんか抽象的で、しっくりこない場合も多い。

今回の記事も多分にそう言う傾向があるかもしれない事をお断りした上で、こう言う考え方もあるのだなと参考程度にお付き合いしていただければ幸甚である。

企画(書)と粒度感

そもそも企画とはなんだろうか?

映画を作ることも企画だろうし、どこかにショッピングモールを作ろうとするのも企画だろう。システム導入でも企画を作るし、ダム建設などの国家的なプロジェクトも始めは誰かが企画を立てるところから始める。
企画の「企」は、「くわだてる」「たくらむ」と読み、漢字辞典ONLINEによると「つま先で立つ。また、つま立って待ちこがれるさま」という意味もあるのだという。
ありていに言えば、「何かやりたい事を計画する」事を言う。

そう言う意味では、会社にいくのも、買い物にいくのも、あるいは食事を作って食べるのも、ある種の算段を立てて実施しているのであれば企画といえば企画である。ただ日常のそうした行為を企画とは呼ばないのは、一つは規模が小さい事、一つはほとんど意図と結果の間にほとんど不確実性が介在しない事が挙げられる。

よって「企画」とは、

ある程度の規模があり、不確実性があるなかで何かやりたい事を計画する事

と言っていい。

特にビジネスにおいては、限られた会社の予算や人員を活用して、なんらかの利益と効果をもたらさなければいけない関係上、他人に理解を促し、承認してもらうために企画書という形にまとめる必要がある。

そう言う意味では、企画の規模が小さい場合や、あるいは事業の枠組みがフォーマット化されていて不確実性も少ない場合は、企画書はシンプルなものになるし、逆の場合はキングファイル一冊くらいになる場合もある。
なので、企画書をどう言う粒度でまとめる必要があるかと言うのが、企画書を作る上での最初のポイントになる。

ここは、決裁会議などで以前出された企画書を参考にするのが一番手っ取り早いが、企画の内容によってレベル感は調整していく必要がある。既存市場で既存製品を改良するくらいであれば簡単な内容でいいが、新規市場で新規製品を狙うのであれば、まずはフィジビリの予算を確保するところから入らなければいけない場合もあるだろう。

ある事例

少し卑近な話になるが、ここで具体的な事例(家のバリアフリー化)を考えてみよう。

あなた(42)は、東京都近郊K市に住む某メーカーの課長である。奥さん(40)と長女(13)、長男(9)の四人家族で木造戸建てに住んでいる。奥さんとは職場結婚だが、今は奥さんは結婚後退社し、近所でパートなどで働いている。

ある時、田舎に住んでいる奥さんのお母さま(あなたにとっては義母)が転倒し、足を悪くしてしまった。
心配した奥さんは、田舎にいる両親をこちらに引き取りたいと言う意向を持っている。あなたと義両親との関係は良く、家を建てる時も支援をしてもらった事もあり、あなた自身も前向きに検討している。ちなみに家自体は1階の和室を殆ど使っていないので、もう2名増えても大丈夫なくらいの広さはある。

問題は2つある。
一つ目は、今の家は普通の戸建てで高齢者向きに配慮されていない為、バリアフリーに改造する必要がある。義母(70)は杖をつけば問題なく歩けるが、浴室も廊下も段差をなくしたい。また、今後の事を考えると1階は車椅子で移動できるようにしたほうがいい。和室は予算が許せばフローリングに改装して、床暖房を入れたい。2階は、あなた家族四人が生活するが、来客があった場合の時だけ義両親が退避できるように、階段には手すりを付けたい。ただ、2階はバリアフリーにするところまでは必要ない。
二つ目はどこから資金を捻出するかである。同居の話はまだ義両親には伝えてはいないが、奥さんのアイディアでは義父(72)が元板前であるので、平日の夕食を義父が作ってくれるのであればその分パートを増やせるとの事である。ちなみに奥さんの試算は下記のようになっている。

[同居前] 時給1,200円、10-16時5H勤務、週4日(平均 月17日)
[同居後] 時給1,200円、10-18時7H勤務、週5日(平均 月22日)

できれば、リフォーム費用はこのパートを増やした分で5年くらいで回収したいとの事である。
ちなみに、義母は元々保母さんをしていたとの事で、子供の面倒も見てくれるのを期待している。
また、リフォームは、長女の受験の始まる来年3月までには終わりたい。

あなたは奥さんと話し合い、一通りその意向を聞いた。奥さんは、齟齬がないように上記の内容を企画書としてまとめて欲しいと言う。

企画書に書くべき項目

さて、あなただったらこれをどのように企画書に落とし込むだろうか?
そもそも、企画書にはどのような項目を記載するべきだろうか?
少し考えてみていただきたい。

紙面が長くなってきたので今回はここまで。
また、次回見ていこう。