中小企業白書2020②〜消費税増税の影響〜

新型コロナウィルスの影響ですっぽり忘れ気味なのだが、昨年2019年10月に消費税が8%から10%に増税された。統計情報を見ると増税後景状が明らかに悪化しているのだが、新型コロナウィルス感染症拡大の影響で消費税増税の影響が正当に評価されない状況になっている。

2020年版中小企業白書 > 第一部令和元年度(2019年度)の中小企業の動向 > 第一章 中小企業・小規模事業者の動向」の第4節に「消費税率引き上げの中小企業・小規模事業者への影響」が記載されている。今回は、その記載を元に、経済産業省(中小企業庁)がどのように消費税率引き上げの影響を見ているのかを簡単に紹介したい。

結論を書くと、

2014 年4月消費税率引上げと比較するとなだらかに施行できた

が経済産業省(中小企業庁)の評価である。
2020年2月17日西村康稔経済再生担当相も「駆け込み需要と反動減は前回ほどではなかった。総じてみれば個人消費のマイナス幅は縮小傾向にある」と談話を出していることから、政府の見解も一緒なのだろう。

消費税率アップの影響

実際に数字を見てみると、個人消費(GDP)(前期比)は、2014年時が2%→−4.8%(下落幅−6.8%)の低下に対し、2019年は0.5%→−2.8%(下落幅−3.3%)となっている。前回2014 年時に比べて駆け込み需要と反動減がなだらかということだ。

これを消費税態度指数(今後の暮らし向きの見通しに対する消費者の意識を示す)を見てみると順調に回復するかに見えたかというところで新型コロナの影響で再度下降していく状況となっている。ただ、これは2014年時も一時的には回復しているので本当にコロナの影響ばかりかは評価しにくい。

そうした状況を踏まえても、2014年時のインパクトよりは緩やかなインパクトとなったとは言っていいようだ。
原因としては、

  • 2014年時は5→8%と3%UPなのに対し、2019年は2%UPの幅しかない
  • 軽減税率の導入で、食料品などは据え置かれている
  • キャッシュレス・ポイント還元事業などにより増税影響が緩和された

以上のようなことが考えられる。
だが、これはあくまでなだらかだったというだけで、影響としてはかなり大きい。

内閣府が2020年2月17日に発表したGDP成長率(季節調整値) 四半期速報値(2019年10-12月)を見ると年率換算で6.3%減。民間最終消費支出が同じく年率換算で11.0%減と大幅に低下している。(※ちなみに、四半期速報値(2020年1-3月)では、GDP成長率(季節調整値)は同3.4%減、民間最終消費支出は2.8%減となっている。)

実際に、消費税率引上げ前後の中小企業の売上DIがどのように推移しているかは下記の図のとおりである。

白書ではこの図をもって「いずれの業種においても、売上 DI は消費税率引上げ時に低下しているものの、前回の 2014 年4月の消費税率引上げと比較すると、サービス業を除き低下幅は小さい」と評価している。確かに「低下幅」は小さいが、2014年の時よりも数値としてはどの業種においても2014年時と同等か、それ以下になっているとも言える。白書ではこれに加えて「消費税率引上げ前に想定したほど業績への影響はなかった可能性がある」と事業者アンケート結果を添えているが、ちょっと官僚的な書き方になっているように見える。

白書ではこの後、軽減税率普及事業により混乱なく新制度へ移行できたという評価を付け加えている。

今後の見通し

キャッシュレス・ポイント還元事業がこの6月で終了する。
昨年のこの時期は、これに関連してキャッシュレスセミナーなどで各地の商工団体を訪問していたのを思い出す。この事業に直接関わっていた立場では、もうそんな時期かと感慨深いものもあるが、消費者側からすると7月以降消費行動を変えるほど意識していたとも思えない。

やはり、税金が二桁超えてくると否が応でも消費を選別せざるを得ない。
身近なところでは、飲食店の支出が大きく減ることになる。特にコロナの影響で宴会の類はほとんどできなくなるので、居酒屋を中心とした外食産業はかなり倒産が増えることになるだろう。

今後コロナの影響が回復したとしても、消費にブレーキがかかった状態で大型で長期的な不況に突入ことになるかもしれない。