中小企業白書2020①〜新型コロナウイルス関連部分〜

新型コロナ騒動ですっかり意識から飛んでいたが、中小企業庁から2020(令和2)年4月24日「中小企業白書」が公開された。本編に関してはまた別の記事で取り上げる予定だが、新型コロナフィルスに関連する部分に関して、一部記載が追加されていたので簡単に紹介する。
中小企業庁がまとめたのは4月1日時点との断り書きがある。
使われているデータは主に2月末までのデータでもあり、コロナ騒動の入り口付近の情報。緊急事態宣言(2020(令和2)年4月7日〜5月25日)後の影響が判明するのはもう少し先になるだろう。

内容は「さもありなん」だが、具体的なデータを踏まえている点が説得力を持つ。
以下、「中小企業白書〜新型コロナウイルス関連部分〜」から抜粋する。

新型コロナウイルス感染症の影響

影響① 全国1,050か所に設置している「新型コロナウイルスに関する経営相談窓口」には、3 月末までに30万件近い相談(ほぼ全て「資金繰り」関連)
影響② 中国の生産や貿易が減少。関係する我が国の中小企業にも大きな影響
影響③ 感染症の影響により、インバウンドをはじめとする国内消費が大幅に減少
影響④ 小売業では一部で買いだめが生じているものの、総じて、業況は悪化
影響⑤ 既に、企業の売上の減少、イベント・展示会の延期・中止といった影響が顕在化

 

影響① 相談数

2020年3月31日時点の実績値。経営相談窓口に寄せられる件数は3末までで30万件近く。相談内容はほぼ資金繰り。業種別の割合を見ると飲食業が3割弱であとは全体的に2割ずつくらい
図3の手元資産の比率を見ると宿泊業が0.55(0.24)、飲食サービスが0.45(0.47) (※括弧内は資本金1000万円以下)となっており、給与・家賃など固定費支払いに苦しさが見て取れる。
余談だが、飲食・宿泊サービスのM&Aが最近かなり増えていて、店仕舞いするくらいなら誰かに引き取ってもらおうと言うところなのだが、今後の見通しを考えると買い手がつかないようだ。

影響② 貿易

相対的に大企業の方が拠点を分散できているようで、中国が占める割合は2割ほど。これに対して中小企業は、中国3割になっていて貿易が復活できなければ中国に進出していた企業には、死活問題になりそうな気配。

中国におけるPMIの推移。ざっくり言うと50以上で好景気、50以下で不景気を表す。
2月に急落しているが、3月にはもう回復しているのは、やはりお国柄だからだろうか・・・。

 

影響③ 消費・インバウンド

2月時点で外国人観光客が▲58.3%。4月の訪日外国人数が前年同月比99.9%減の2900人とのこと(日本政府観光局(JNTO)5月20日発表)。オリンピック需要を見込んで新規拡張した客室は軒並み遊休施設になってしまうことだろう。仮に2021年にちゃんと開催できても、防疫の観点から観光客を呼び込めるかは不明。

百貨店売上高も前年同月比で34.6%。4-5月は非常事態宣言で営業していないので、0%。相当厳しい。

 

 

 

影響④ 業況

建設業が相対的にはいいだけで、全業種壊滅的。
小売・サービスなどBtoC企業は当然のこと、製造業や建築業など海外の部品調達などサプライチェーンに影響があると、受注があっても生産が難しい状況になる。

 

影響⑤ 個別影響

大企業との比較で、「影響あり」「これから影響あり」の割合が中小の方が若干少ない。
影響の内容は、「売上(来店客)が減少」が49.7%、「イベント、展示会の延期・中止」が49%、「商談の延期・中止」が41.2%と経済活動に直接影響が出ている様子が分かる。

以上。
詳しいところは直接資料を見て確認してもらったほうがいいが、簡単に状況を抜粋した。

今後の見通し

白書の中では、まだ入口時点での状況だったので対応策に関してはあまり述べられていない。
「事業継続計画(BCP)の策定」「テレワークの導入」の2点のみ言及がある。

やはりと言うが、そのどちらも企業の規模が大きければ大きいほど対策が取られている状況。

 

今後の見通し

  • 4月統計情報が出てくる6月上旬
  • 5月統計情報が出てくる7月上旬
  • 上場会社の4〜6月の四半期報告が出てくる8月上旬

など、緊急事態宣言期間中(2020(令和2)年4月7日〜5月25日)の影響が可視化される各月上旬に段階的に経済的なショックが波及していく可能性が高い。
財政出動と金融緩和策でお金廻りに関しては一時的な手当できているが、倒産や破綻懸念先が増えると金融機関の財務も痛むので、9月以降は貸し剥がしの増加、地方の小さな金融機関などの破綻もあり得るのではないかと予測している。

財政出動に関しては結局の所、国の借金によって賄われているののでこれを返済するにはいずれ増税をするか、ハイパーインフレでも起こすしかない。
米中対立も本格化しつつある。

来年の今頃はどんな風景を見ることになっているだろうか・・・。