新型コロナウィルス感染症拡大に伴う経済への影響を分析する

5月に入り2020年3月の景状が指標値として発表されるようになってきたので、新型コロナウィルス感染症拡大防止に伴う影響を簡単に分析してみようと思う。
分析の数値は東京都産業労働局が4/22付に発表した「東京都中小企業の景況(令和2年4月調査)」(PDFファイル)を元にしている。

指標値はDI(=Deffusion Indexの略)が使用されている。
DIの計算方法はPDF 1ページ目を参照のこと。ここでは+100(%)〜−100(%)の間で示され、+(プラス)なら[良いor増加or上昇]、−(マイナス)なら[悪いor減少or低下]と判断される。大雑把に言えば、[良いor増加or上昇]と回答した企業から[悪いor減少or低下]と回答した企業を百分率で示してる指標。どれだけ良化・悪化しているのかの量的な観点はなく、答えた企業の数の差であり、あくまでも心理的な方向感という位置づけである。(例えば過去最大の黒字を上げてもこんなもんじゃないと思っていれば悪いという回答になるし、過去最大の赤字でもよくやったと思えば良いと答えるため。)

2020年3月の指標を振り返る

「東京都中小企業の景況(令和2年4月調査)」では以下の通りである。

東京都中小企業の景況(令和2年4月調査)より抜粋・コメント追加)

【2020年3月都内中小企業:全体】
業況DI:前月▲41→当月▲57(16pt減少。大幅に悪化)
業況見通し:前月▲54→当月▲64 (10pt減少。先行き懸念強まる)

【2020年3月都内中小企業:業種別業況】
小売業:前月▲53→当月▲75(22pt減少)
サービス業:前月▲30→当月▲50(20pt減少)
卸売業:前月▲44→当月▲57(13pt減少)
製造業:前月▲40→ 当月▲53(13pt減少)

【2020年3月都内中小企業:前年同月比売上高DI】
全体:前年同月比▲44→▲56(12pt減少)
小売業:前年同月比▲50→▲69 (19pt減少)
サービス業:前年同月比▲39→ ▲50(11pt減少)
卸売業:前年同月比▲42→▲52(10pt減少)
製造業:前年同月比▲45→▲55(10pt減少)

全ての指標で悪化。3月時点の業況でプラスだったのは、ソフトウェア業のみ。業況見通しに至っては全業種区分で悪化となっている(PDF 2ページ目)。

全国レベルでみた場合もでもほぼ同じ状況を呈しており、

3月のDIは全9指標中、8指標が悪化。新型コロナウイルスの発生により、東日本大震災発生時を超える景況悪化 インパクトとなり、そのDI水準はリーマンショック発生時に近づきつつある。

とのことである。(「中小企業月次景況調査(全国中小企業団体中央会 4/27付)」より)

中小企業月次景況調査(全国中小企業団体中央会 4/27付)より抜粋)

全産業総崩れであり、3月時点でこうなので4月はリーマン超えも確実である。悪いだろうことは分かっていたが、100年後の歴史で振り返られるくらいのインパクトが生じていると言っても過言ではない。

業種別に見てみると、小売業は特にひどく、BtoCでリアルな接客を伴う業種はほぼほぼ壊滅的である。だが、製造業も程度の差でしかない。中国からの部材の輸入が再開できないと在庫が7-8月までしか持たないという声も聞こえてきていおり、楽観はできない。

消費税影響

今回の新型コロナウィルス感染症拡大にともなって急速に経済が収縮した感を持つが、実はコロナ影響を抜きにした場合でも大型の不況の入り口に差し掛かっている状況ではあった。2019年10-12月GDPは名目ベースで前期比-4.9%、実質ベースで-6.3%減少となっている。今や隔世の感もあるが、2019年10月消費税増税や大型台風の影響により個人消費の落ち込みがその原因である。

経済産業省は、個人消費の落ち込み抑制とキャッシュレスの普及を目指して中小事業者向けにキャッシュレス消費者還元事業を推進していたが、ほとんど焼け石に水だったようだ。消費税増税は財務省手動で推し進められたが、今回のコロナがなければ景気を腰折れさせた責任が取りざたされていたことだろう。

3月がどういう月だったかというと、「3/22 オリンピック延期決定」「3/25 外出禁止要請」が出ていたが「緊急事態宣言」は4/7であるため、通勤は通常通り行われていた認識だ。(学校は休校)。4月は感染者数がピーク向かう過程で経済が最も停滞した時期にあたるが、今回分析する3月はまだそこまで至っていない。

緊急事態宣言中はどの道経済活動が抑制されているので消費税に左右されないが、経済活動が再開された折には大きな重荷になって消費を萎縮させたままにする可能性が高い。

何れにせよ、景気に関してはかなりの冷え込みであり、楽観できる要素がないというのが現状である。