【緊急特集!】中小企業のための、初めてのコロナ資金繰り対応⑤〜持続化給付金 雑感〜

4月30日補正予算が通過し、いよいよ各種補助金・助成金・給付金の申請がスタートした。既にスタートしている東京都の「新型コロナウィルス感染拡大防止協力金」と合わせて、「持続化給付金」や事業者向けではないが「特別定額給付金」が開始されている。

政府の動きが遅いと批判もあるものの、システム屋さんからすると要件定義からリリースまで2ヶ月弱で申請サイトを立ち上げたのは驚異的なスピード感。支給まで概ね2週間程度を要するようだが、数十万件・数百万件の申請を扱う制度をこの短期間で稼働させた関係者の方々の尽力には頭が下がる。

「持続化給付金」申請時の注意点

「持続化給付金」の申込み手順に関してはYouTubeやいろんなサイトで解説をしているのでここでは割愛するとして、実際に登録をする上で気になる点だけメモを残しておこう。

  • 基本情報入力:業種(日本産業分類)

eStatの日本標準産業分類(平成25年[2013年]10月改定)から自分の業種を選択するのだが、実際何を選んでいいか迷う場合がある。今回の持続化給付金の対象者は「中小企業基本法の中小企業の定義」とはなっていない(※1)ので、どの業種でどれだけの申請が出ているのかを行政の側が把握する目的で入れさせているものと推測される。正確に選択するのに越した事はないが、ある程度ざっくりでも問題ないだろう。複数の業種にまたがる場合は、売上高の大きい方を基準に選択すると良いだろう。

※1「資本金の額又は出資の総額が10億円未満。資本金の額又は出資の総額が定められていない場合は、常時使用する従業員の数が2,000人以下」が対象

  • 基本情報入力:常時使用する従業員

何を持って常時使用する従業員なのか迷うところだが、正確には下記のU R Lに示される通りだ。ただ、下記のU R Lの定義をみても正直「???」だろう。誤解を恐れずに超ざっくり言えば、正社員もしくは、正社員でなくても1年以上雇用する(予定の)人は常時使用する従業員の扱いになる。

https://www.chusho.meti.go.jp/faq/faq/faq01_teigi.htm#q3

直近で退職者や入社者がいる場合はカウントするべきか否か迷う部分があるかもしれないが、常時使用する従業員の数が2,000人を超えるか越えないかギリギリ判断が迷うような状況でなければ、多少ぶれていても問題はない

  • 売上入力

「売上減少の対象月」
2020年01月以降で前年同月比50%以下となる月があればどの月を入力してもいい。ただ、一番売上が少ない月を選んでも前年同月比50%以下にならない場合もあるので、気をつけよう。また、売上を不自然に別の月に付け替えて50%以下になるようなことをすると会計操作になるのでやってはいけない。

「口座情報」
当たり前だが、「口座情報」で入力した情報と「口座情報添付」で貼付する通帳の情報は同じものでなければいけない。ここは手で入力した情報に誤りがあるとき、証跡として確認する手段を提供するために添付しているので、差異があるとそれだけで入金が大幅に遅れる原因となる。

  • 添付書類

確定申告書 第一表と受信記録
税理士に頼んでいれば、決算書をファイルしたものをもらっている筈なので、その中から確定申告書の「第一表」のファイルを選んで、写メもしくはスキャンしてアップロードをする。個人事業主だとeTaxや自分で提出した確定申告書類(受付印のあるもの)の該当ページをアップロードする。
法人は法人税の確定申告書を選ぶこと。「確定申告書」とタイトルされているのでアップすると消費税の方を提出してしまう場合もある。特に、e-Taxを使っていた場合は「消費税」の受信記録を提出してしまう場合もあるので、税目や種目が「法人税」になっていることをしっかり確認する。
今回の提出の中で一番チェックされる項目の一つで、納税をしているかを確認する部分になる。ここは一番注意深く作業する。

対象月の売上台帳
基本的には、売上対象月の売上がわかる状態になっていればいいので、総勘定元帳の科目「売上」などに損益計算書の月次推移表など合わせて提出するなどしても良い。別のサイトでも色々と解説しているので割愛するが、Excelなどで手作りすることもできる。

雑感

WEB申請は、ドキュメントさえ揃っていれば15分くらいで可能だが、それでも迷う部分は多い。特にある程度ITリテラシーが必要となってくる。まず、画像を添付するのにファイルやディレクトリの概念が必要だし、画像ファイルの種類(jpg, png, pdf)と言われても何のことか分からない人も多いだろう。
結果として対面でないとやり方が分からない、郵送したけど正しいドキュメント揃っていないなど、円滑な申請ができない例も増える。今はやりのオンライン会議なども含め、できる人とそうでない人で二極化が進んでいく可能性が高い。
社会のI Tリテラシーをどう挙げていくかというのが今後の課題になっていくだろう。

もう一つ。
今までの補助金・助成金は、厳しく事前審査を課すのが国の基本的な方針だった。税金を投入する以上は、正しく目的の通りに資金が使われる必要がある。それは正しいのだが、補助金・助成金を申請するのも審査するのもややこし過ぎて、本来資金として使える額以上に手間暇をかけることとなった。結果として本当に補助金を使ってもらいたい企業の申請が集まらないとく本末転倒な結果が生じる場合もあった。
今回は、給付のあり方としてスピードを重視する必要があり、必然的に受給後の追跡が重視されるようになるだろう。これまでは省や行政の管轄をまたいで企業の動きを追う事はできなかったため事前審査を重視する他なかったが、今後は法人番号をキーにデータの紐付けやBigData解析などができるような時代になるのではないだろうか?

国が民間の事業体に関与を強めるという意味では賛否はあるところだが、公正で効率的な運用が担保されるのであれば悪い話ではないように思う。

【免責事項】
ここに掲載した情報は2020年5月4日時点の情報です。今後、情報が更新される可能性があることを予めお断りしておきます。また、政府の資金繰り対策は主に中小企業以下の規模の事業者に対するものであり、その条件にあてはまるかは別途確認が必要です。
本記事の内容をもとに何らかの損害が発生した場合でも補償等には一切応じられません。