さぁ、プロジェクトをはじめよう<第1回> 〜プロジェクトとは何か?〜

何故、プロジェクト管理なのか?

不定期更新になるかもしれないが、しばらく「プロジェクト管理」をテーマに記事を上げて行きたい。何故、プロジェクト管理なのか?理由は2つある。

1つは、自分の専門分野だからだ。
経営コンサルタントを名乗ってはいるが、そもそも出身ベースがITでのプロジェクト管理でもあるので、多数の人間が共同で仕事をするためにどんなことに留意すべきかを伝えたい。

もう1つは、2020年代・・・今まで以上に変化の激しい時代に入り、より環境変化に柔軟で機動力のある組織作りをする必要が出てきたからだ。その解決策の一つとしてプロジェクト化する事がより一層重要になってきている。その割にプロジェクトを取りまとめる方法や技術が組織の中に蓄積されていない場合が多い。

さて、プロジェクト管理には「PMBOK(Project Management Body Of Launguage =プロジェクト管理知識体系)」と呼ばれる管理手法が一般的だが、特に整合性を担保しながら今後の記事を書くことはしないので予めお断りしておく。
PMBOKは「知識体系」と呼ばれるだけあって辞書的で、分からない人間にとっては情報の羅列のようにしか見えない。また、このブログも経営者を想定して記事を上げているので、正確な知識を勉強してもらうというより、例えば「他社と共同で事業をやりたいんだけどどんなふうに組織を動かせばいいんだっけ?」みたいな疑問にヒントになるようなことを載せていきたい。

2つの特性

さて、「プロジェクト管理」に入る前に、そもそも「プロジェクト」って何ですか?をしっかりと捉え直してみよう。

PMBOKによるとプロジェクトとは、

独自のプロダクト、サービス、所産を創造するために実施する有期性のある業務である
( 所産=「結果(Result)」)

だそうである。
ここで重要なことは2点ある。
「独自」と「有期性」である。

機能別組織と事業別組織

少しわかり易く説明するために、例を挙げよう。

ざっくり言うと組織には機能別もしくは、事業別に分けられる。(細かくは地域別やあるいはマトリクス組織などもあるが今回は割愛する。)
機能別組織とは、営業は営業部、製造は製造部、運搬は運送部などその機能により分割していく組織だ。比較的小さい会社に多い。また、事業別組織は、健康食品事業や医療事業、薬品事業など販売する商品やサービスにより分割していく組織だ。各事業部の中に営業課や製造課などの機能を抱え、比較的大きな会社に多い。

これらの分類は組織の拡大縮小などの内部的な要因や、環境変化などの外部的な要因に応じて変更されるものの、基本的には長期的かつ恒常的に存在する組織となる。また、取り扱う業務も定常的である場合が多い。
それは機能や事業をまとめることで専門性を高めることができるからだ。

環境変化が緩やかで、大量生産・大量消費の時代はこれで良かったが、今の社会は市場の関心もニーズも社会的要請も凄まじい速さで変化する時代になっている。昨日売れていたものが、今日売れなくなるといったこともザラである。そんな中で、環境変化に合わせて組織を変えていくのは難しい。組織が大きくなればなるほど、その変更の複雑度は増すばかりだ。

そんな中で新規商品を開発することを考えてみよう。
例えば健康食品事業部は通販機能を持っていて販売力が高い。医療事業部は品質管理が得意で、薬品事業部は開発力が高いとする。経営者としては各事業部の強みを掛け合わせてスピーディに新規商品を作りたい。だが、そのためにいちいち組織を新設するのであれば、コストがかかってしょうがない。しかも出来上がった商品が成功するとも限らないので、失敗した場合にまた組織を組み替えるとなるとまた大変な作業となる。

こうした中、採用されたのが「プロジェクト」と言う考え方だ。

プロジェクトとは何か?

プロジェクトの特色である「独自の」と言うのは、目的を限定して「その為だけ」に作ると言う意味である。また、「有期性の」とは、恒常的に存在するわけではなく、あくまでも期間を限定して一時的に作るのだと言うことだ。

よって、プロジェクトは組織横断的に人を集めて、課題解決など何らかの目的を達成するために、期間限定で作られる枠組みもしくは枠組みということができる。まとめるとプロジェクトとは、

期間と目的を限定し、適切な人材を集めて目的志向的に課題の解決を図る組織的な枠組み、または、取り組み

とも言える。

これは広い意味では、一つの会社内に限定されるものではない。
複数の会社や組織が協同しながら、課題解決を図る仕組みとも言える。
よって、ITの会社ではシステムの導入をプロジェクトとか案件として取り扱うし、建設会社もプロジェクトという。自治体は「事業」と呼ぶがその内実はプロジェクトである場合が多い。

プロジェクトは単純に「計画」と訳される場合が多いが、動詞の「project」は「前に投じる」「光(や映像)を投影する」という意味も持っていて、いわゆるプロジェクターの語源でもある。個人的には、単に「計画」というより、「課題解決を図るために何らかのビジョンを描き出す」という意味で捉える方が好きである。

プロジェクトの時代

よく、今は変化の激しい時代だというが主観的には変化の激しくない時代はないような気もする。
今の時代は、戦国時代などのようにいつ命が奪われるか分からない時代に生きている訳ではないし、明治維新や第二次大戦前後の価値観の変化よりは緩やかであるとも言える。
一方で、物理的な意味でも情報などの仮想的な意味でも、人・物・情報が動く量や速さ、またはその変化の拡大はこれまでのどの時代と比べても圧倒的であるとも言える。
2000年代に情報革命が叫ばれて久しい。
だが、iPhoneが誕生したのは2007年だし、Lineの初リリースは2011年で10年も経っていない。今やIoT、5G、AIの時代に突入しようとしていて、その着地点は未だに見えていない。

日本も人口が減り、社会が高齢化して活力が失われていく中で、どのように未来を描くのか。
前向きにも後ろ向きにも様々な課題が問われる時代になりつつある。そんな中、既存の組織の枠組みだけでは決して解決のできない課題に立ち向かう必要が出てきている。

今は、プロジェクトによって課題解決を図る時代であるといっても過言ではないだろう。