クレジットカードの仕組みと選び方②〜プロパーカードと提携カード
前回はクレジットカードの仕組みを簡単に説明した。今回は、選び方に焦点を当てよう。
ここで述べるのはあくまでも「選び方」であって、具体的などのカードが良いかではない。具体的なカードの比較に関しては、ネットで「クレジットカード おすすめ 2019」のように検索して貰えれば分かりやすいサイトはいくらでもあるし、それでも迷うなら価格COMで見るので十分だろう。
問題は、こうしたサイトを見た時でも結局何を軸として選んで良いのかが分からない点である。ここでは、その基準を提示したい。
プロパーカード
前回、クレジットカードはカード発行会社が発行すると説明した。しかし、場合により国際ブランドが自分でカードを発行する場合もある。この、国際ブランドが自分で発行しているカードを「プロパーカード」と呼ぶ。全ブランドが発行しているわけではない。「JSB」「American Express」「銀聯」はプロパーカードを持っているが、「VISA」とか「MASTECARD」は持っていない。ちなみにカード発行会社が独自に発行するカードもプロパーカードと呼ぶこともあるが、狭義の意味では国際ブランド独自のカードと理解をした方が良い。
大抵の場合、プロパーカードはポイント還元とかクーポンとかの特典がほとんどない。そればかりか使わなくても高い年会費を取られて、日常生活に何か役立つことはほとんどない。同じブランドのカードを持っているなら、提携会社発行のカードを使う方がよっぽど得なのではないかと問われたらと、それは全くその通りだ。
ではなんでそんな不便で使い勝手の悪いカードが存在するのかというと、「ステータス」があるからだ。
カードはグレードが上がれば上がるほど、年収や資産、職業の要件が厳しくなる。そして大抵の場合、プロパー発行のカードはグレードが高い。
グレードの高さは一種の支払い能力の証明であり、ランクの高いカードを持っていれば持っているほど成功者の証ともなる。そうした人々にとってはポイント還元とかクーポンにこだわる事自体が野暮な話で、こうしたカードを持つ人しか入れない空港ラウンジや高級ホテルの質の高い接客サービス、一般人お断りの超高級レストランの予約などが優先的に取れたりする事がメリットなのである。
ステータスを選ぶか、お得さを選ぶか
つまるところ、クレジットカードを選ぶ基準はステータスを選ぶか、お得さを選ぶかの二軸に分けられる。
国際ブランドのプロパーカードはステータスが高いが直接的なメリットは少ない。代わりに何かの支払いが伴う局面で、質の高いサービスを受けられる。提携会社のカードは、マイルが貯まったり、Tポイントが貯まったり、クーポンが提供されたりと直接的なメリットが大きいが特にサービスが良くなる訳でもない。カード発行会社のカードは丁度その中間くらいの位置付けで、銀行や信販会社が業務を担っているだけあって、保険とか金利優遇とかサービスを提供してくれる。
経済能力は人々の価値観に密接に結びつきやすいが、ここでは価値判断をしたい訳ではなく、伝えたいのは、カードを選ぶときは自分の社会的地位や生活において最も適したものはどこにあるのか、ということだ。
別に世のお金持ちが全て海外旅行を好きな訳ではない。ユニクロを着てマックでハンバーガーを頬張ることに幸せを感じる資産家もいれば、コンサルタントのように収入が少なくても付き合いである程度見栄を貼らなければいけない職業もあるだろう。
問題なのは、そうした価値基準があることに無頓着であることで、知って選ばないことと知らなくて選べないことの間には深い懸隔が存在する。そもそも保有するカードを1枚に限定しなければいけない理由はないのだから、場面で使い分ければ良いだけだ。
プロパーカード | (プロパーカード) | 提携カード | |
発行 | 国際ブランド | カード発行会社 | 提携会社 |
種類 | (Amex、JCB、銀聯) | 銀行系・信販系 | 流通系・航空系・ネット系・キャリア系・石油系 etc |
特徴 | 海外旅行・国外で便利 | 各種決済に強い | 地域密着系サービス |
例 | JCBゴールド Amexグリーン etc |
三井住友VISAカード、セゾンカード、Oricoカード、NICOSカード etc | マルイカード, JALカード, dカード, 出光カード, ファミマTカード, ルミネカード etc |
補足 | ・ステータスが高い ・空港ラウンジなど利用 ・高級ホテルのサービスや高級レストランの優先的な予約 |
・金利優遇 ・保険関係が強い ・グルメや旅行関係などの特典が充実 |
・提携会社各社の特典やポイントが付与される(マイルやdポイント、Tポイント等) |
提携会社カードの選び方
しかし、具体的に提携カードを選ぶ時には、結局どのカードがいいのかは分からないかもしれない。提携カードはそれこそ数万種類くらいありそうだし、それぞれ単純に比較できないようなサービスを付与している。
ただ、選ぶ前にまず押さえないといけないのは「クレジットカードは借金である」という事だ。回数や各社により違いがあるものの、概ね年利15%の金利がかかる。このほぼ0金利の時代に、大手を振って年率15%もの金利で貸付ができるのだから金融機関にとっては麻薬のような商品である。
また、信用情報は会社の枠組みを超えて共有・蓄積されている。
学生時代に携帯電話代をクレジットカード支払いにして滞納したがために、社会人になってカードを持てないという話もよく耳にするし、調子に乗って特定の時期に複数枚のカードを作ろうとすると審査に落とされる場合もある。
そもそも「お得な」カードなど存在しないと思った方がいい。
それでもカードに利用価値があるとするならば、何れにせよ出さざるを得ない経費にカード払いを充てる事だ。例えば定期代・電車費・ガソリン代・食費・光熱費・携帯電話代など、現金で払おうが口座振替しようが、金額が大きく1回払いでどうしても出ていくものをカード払いにするとある程度は得となる。海外出張の多い人がマイルを貯めるのも賢い使い方だ。
どのカードがいいのか選ぶのが難しい。
結局のところその人の生活パターンにより異なるからだ。都市部で電車通勤の人はSUICA VIEWカードが良いだろうし、地方で車通勤の人は出光カードなどが良いかもしれない。
ただ、こうした使い方はよくカード会社が指南するところでもあるが、実はポイントを計算してみると案外大してお得でないこともある。
例えば2019年8月現在のViewカードのポイント還元率は0.5%なので、年間の定期代が20万円支払ったとしても1000円分ほどにしかならない。2年目以降の年会費が477円(税抜)なのを考えると、年間で差し引き500円くらいにしかならない。これよりは、飲み会を年間1回我慢した方がよっぽど、お得だ。
カードは現金を持たないでいい利便性があるので全く不要ではないし、海外旅行に行くときに自然に保険に入っていてくれたりと、社会に生きる現代人になくてはならないものである。だが、金融機関にとってはその本質は人を借金に誘うツールである。よって、ちょっとしたポイントに右往左往するのもいかがなものである。