経営から見たシステム導入工程(プロセス)1:全体像

相互不振を乗り越える

IT業界で20年以上仕事をしてきた。

最近はコンサルティングを中心に活動しているが、ITを活用するある程度以上の規模の会社と、そうでない中小企業との格差が益々広がっているように感じる。ITの会社は合理的かつ最短距離で目的を達成しようとする人々の集まりなので、話の通じない人と直接向き合うのを避けたがる傾向にある。一方、中小企業の経営者も、IT業界の人々に関して横文字だらけでええ格好しーとアレルギーを持っている人も多い。要は、相互不信の状態がある。

 IT業界に携わっている経験からお伝えすると、法律家が法律用語を使うように、IT業界にもIT業界特有の言葉があり、あえて何か特殊な呼び方をすることによって、そこに含められた背景や業界内での暗黙の了解を前提に仕事を進めることができる。悪意があるわけではないが、話が早いのである。

ただ、自分がこれまで食べてきた業界にネガティブなイメージが持たれるのは悲しいことであるし、ITには仕事の無駄を省き、見えない物を見せ、人の人生の時間を有意義にしてくれる可能性がまだまだある。

今回は、何回かに分けて、システム導入をしたいユーザー企業の経営サイドから見た、導入工程(プロセス)を説明したいと思う。

あらかじめ断っておくと、ここでは厳密な言葉の定義はしない。
IT業界で長くいればいるいるほど、ちょっとした言葉の使い方のミスが品質・コスト・納期に大きく影響を与えてしまうような経験をする。その結果、時にクドい説明をする場合もあるが、今回はおおざっぱにイメージを掴んでもらうことが目的なので、方向感を間違えない程度でいいと思う。

もう1点。システム導入は、「出来合いのシステムを買ってくる」場合と、「全て自分仕様に作る」場合と大きく2つのパターンが存在するが、今回は後者の「全て自分仕様に作る」場合を想定して説明する。出来合いのシステムを買うのであれば別に工程(プロセス)全体を知る必要もないし、関係する工程(プロセス)も全体を理解していれば網羅できるからである。

全体像

全体像を概観しておく。

各工程(プロセス)は会社によって呼び方が異なったり、もっと細く分割する場合もある。だが、本質的にやっていることは変わらない。

まずは、どんなシステムを作るのかを「企画・検討」し、実際に発注するにあたり「要件を定義」する。要件定義を受けて、開発会社はシステムを「設計・開発」し、システムが要求通りに動くか「テスト」。以前に使っているデータや設定があればそれらを「移行」した上で新システムを「リリース」して、あとは「保守・運用」にはいっていく。

ご理解いただけただろうか?
もはや日本語を並べただけで、説明になっているのかすらわからない。
だが、言葉としては理解できても、イメージとして腹落ちはしていないと思うので、次回から、家のリフォームになぞらえて、1つ1つの工程(プロセス)をもう少し説明して行こう。