2015年(平成27年)派遣法改正の影響

派遣法改正

2015年(平成27年)に派遣法が大きく改正され、その影響がジワジワと現れ始めている。

2015年以前は、常用雇用契約を結び、専門性の高い技術者などを派遣する「特定派遣」と、登録型雇用のいわゆる「一般派遣」に分かれていた。前者は届け出制で後者は許可制だったが今は一律「許可制」で、派遣期間も同じ職場だと3年を超えられない。

派遣は働いている本人からすれば時間の調整がしやすいし、慣れた仕事を3年で区切られるのはデメリットのように思えるが、2015年改正により「派遣労働(とその利用)は一時的なものである」という考えが明確化され、労働者自身にも今行なっている契約の意味に自覚的になるように促している。そして、事業者側にとっては「3年以上働くのであればちゃんと雇用しなさいよ」、「キャリアップの機会も与えなさいよ」、「雇用を安定させなさいよ」というのが政府の立場となっている。

資産要件

また、人材派遣の業者には資産要件が追加されていて、簡単に言うと一事業所ごとに「純資産2,000万円以上」「現預金1,500万円以上」ないと人材派遣業を始められないようになっている。もともと特定派遣は許可制だったので、小さな事業者が社員を雇った上で契約先に派遣することができたが、今後は安易にそうした人貸しのビジネスができないようになった。ただし、2015年以前に許可を受けている事業者は、派遣労働者10人以下場合は純資産1,000万円現預金800万円、5人以下の場合は純資産500万円現預金400万円などの緩和措置がとられている。

こうした条件を勘案すると、派遣労働者一人当たり純資産100万円・現預金80万円以上の資産を要求していると理解できる。よって資産要件を普通にクリアするためには最低でも派遣労働者20名くらい雇える会社規模が想定されていることがわかる。中小企業基本法では、小規模企業者を従業員20人以下(商業(卸売業・小売業)・サービス業は5人以下)の事業者等と定義しているので、これは小規模事業者は参入できないことを意味している。

業界の健全化

小規模事業者締め出しというと大企業の意向も働いていそうに見えるが、人材派遣業の実態としては反社勢力が関与した質の悪い業者の話もたまに耳にするし、真の意味での弱者は労働者でもあるので、業界の健全化を目指す意味ではある程度やむを得ないのかもしれない。
小規模でもこれまで真面目にやっている事業者にとっては頭の痛いところではあるが、資産要件を単に借り入れではなく純資産を基準にしているところをみると、事業者側にも人材派遣業で食う覚悟を求めているように見える。