「小規模持続化補助金」は、経営計画作成のエントリーモデルである

小規模事業者持続化補助金の背景

そろそろ「小規模事業者持続化補助金」の公募が始まるころだ。

この補助金は、平成26年に成立した「小規模企業振興基本法(小規模基本法)」をきっかけに、小規模事業者向けに用意された補助金である。そもそも日本の中小企業政策は、同じ中小企業とは言え、組織の枠組みが整っている規模の企業も、パパママ経営の小規模企業もこれまでは区別をしていなかった。しかし、流石に5人以下(製造業など一部の事業者は20人以下)の企業と時に100人(製造業などは300人)近くになるような企業を同列に扱うのはおかしい。そして、何より今後本格化する、少子高齢化・人口減少がリアルに売上に影響するのも、ギリギリの運転資金で経営を回している小規模事業者の層なのである。
そこで規模をちゃんと区別し、課題にあった施策を打つために用意されたのが「小規模事業者持続化補助金」である。

経営計画作成を促す

面白いのはこの「持続化」の意味だ。
「持続化」とは右肩上がりの成長を促すためのお金ではなく、「持続的に経営を続けるための」ということで、要は「まずは生き残りなさいよ、諸君!」と叱咤激励しているのである。
持続化補助金の上限額は50万円までで、それだけのお金で生き残りなんて…と見る人もいるかもしれないが、この補助金は実は、今までどんぶり勘定でしかやってこなかった小規模企業の経営者に「経営計画」を書いてもらうというのが本来の目的なのである。だから、他の補助金では取り扱わないような「販路開拓」や「業務効率化」をメインに、少額で使い勝手がよいものを用意しているのである。また、申請に当たって、商工会・商工会議所の確認(「事業支援計画書」)が必要なのも、経営指導員が伴走することで、今まで感覚的にやっていた経営者に「経営」という概念を理解してもらおうという意図がある。

計画作成の効果

計画を立てるだけで経営がよくなるのか?

平成26年持続化補助金実施後のアンケートでは、約97%が新たな取引先や顧客を獲得し、売上についても約90%が「売上が増加」もしくは「増加の見込み」とのことである。(「読んで得する!ミラサポ総研Vol29」)

経営計画というのは言ってみれば「地図」をつくる作業である。
勝手知ったる裏山で、地図なんてなくても今までやってきましたけども・・・という感覚の経営者は多い。しかし、勝手知ったる裏山は、逆に勝手の知っている裏山でしか商売をしていないことのあらわれである。一度今いる場所を振り返り、しっかりとした数値で状況を把握することで、様々な気づきが得られる。もう少し視野を広げて、今自分のいる位置を把握し、新たな世界を開拓すれば、経営が良くならないわけがないのである。

小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者の経営計画作成のエントリーモデルなのである。