経営から見たときのシステム導入

システム導入アプローチ

何か会社に新しいシステムを導入する場合、そのアプローチの仕方としては、
  • システム合わせて業務を見直すか
  • 業務に合わせてシステムを作るか
の大きく二つとなる。
これは、間取りの決まったマンションを買うか、自分の住みたい家を間取りから設計するかの違いに似ている。
前者は例えばクラウドシステムやERPのような出来合いのサービスを利用するので相対的に導入期間も短く、費用も安く上がるが、システムに合わせて既存の業務を再構築する必要がある。後者は、自分の会社の業務に合わせた使い勝手の良いシステムを構築できるが、一から作るので期間も費用も高くつく。
個人的には、クラウド全盛のこの時代、前者がおすすめである。
特に中小企業は投資できる金額にも制約があるため、基本的には前者一択の場合が多い。だが、せっかく安く早く上げようと出来合いのシステムを導入したのにも関わらず、業務にフィットしない部分を無理に合わせようとして機能追加やカスタマイズを繰り返し、結局期間も費用も高くつく場合があるのは注意が必要だ。

ある事例

ある会社の人事部は人事課と給与課に別れていて、人事課では人の情報と人事関連申請の管理を、給与課では労働時間と給与の管理をやっていた。そこにある有名なERP型の人事システムを導入し、今まで紙で行なっていた申請などがシステム化するのだが、これまで人事課と給与課で管理していた情報項目がそのシステムでは一つの画面で入力するような形式になっていた。この場合、その入力に関してはどちらの課に寄せるか、合同で入力チームを作るなどの対応をするべきなのだが、入力画面を分けるような仕様変更をかけようという決定がなされた。
この例は、わざわざ仕様変更を選んだ悪い例だ。

覚悟と粘り強さ

ERPなどの代理店の営業の説明不足にも原因があるが、これは、システムを導入すれば勝手に効果が上げられると誤解をする経営層の理解不足も大きい。
先ほどの例では、人事課と給与課との間の調整を嫌がった人事部長が深く考えずにシステム側に解決を求めたのが一つの原因だが、出来合いのシステムを使う以上は、どのように業務をシステム側にフィットさせるのか、人の配置や気持ちに配慮しながらデリケートに、時に、大胆に変えていく覚悟と粘り強さが必要になる。
システム導入というのは、「システム」という響きから何らかの合理的で正解のある作業のように思えるかもしれないが、実は非常に泥臭い作業なのである。