「商工会」と「商工会議所」(その4)(最終回)

さて、これまで商工会・商工会議所のメリットを紹介してきたが、最後に課題と今後の展望についても少し触れておこう。まずは課題から。

リソース不足

商工会も商工会議所も、会員が一貫して右肩下がりとなっている。経営指導員は、会員数に対して地方自治体が予算を割り当てているため、会員数の減少はそのまま商工会・商工会議所の影響力の低下を意味する。

会員あたりの経営指導員数が決まっているのなら、1社あたりに配分されるリソースは変わらないように見えるが、そもそもの割り当てがアンバランスである。2014年度版中小企業白書によると、「人口5万人未満の都市の商工会議所の経営指導員は一人当たり約430者の小規模事業者を抱えている。加えて、地域振興の活動も経営指導員が行っているケースもあり、仮に経営指導員が巡回指導で1日2者の会員企業を訪問したとしても、1年間で1回しかその企業を訪問できないことになる」のだそうだ。

認知度の低さ

そもそも商工会・商工会議所が何をやっているところなのか、一般に認知されていない。

地場の自営業者なら馴染み深いかもしれないが、検定試験を主催してくれるところくらいしか一般には接点がない。筆者は、フリーのSE・PMOとして個人事業主を10年間ほどやっていたが、率直に言うと仕事をする上で意識したことはなかった。コンサルタントとして独立してからようやく「商工会」と「商工会議所」の区別がつくようになったくらいで、「顧客」となるべき個人事業主や会社にその存在が届いていないと言える。

制度疲労

参加する経営者が高齢化して、若い手が少ない。また、若手の自営業者が拠り所とするような基盤として機能していない。特にIT系の企業が少ないのが気になるところである。商工会・商工会議所は、その成り立ちを考えれば商工業者が自由意志に基づいて自律的に運営されるべきものであり、環境変化に合わせて必要なメンバーが自然と呼び込まれ、その構成員が新陳代謝していくべきだが、必ずしもそうはなっていない。

これまでの仕組みや枠組みは制度疲労を起こしていて、必ずしも今の社会環境にマッチしているとは言い難い。

商工会・商工会議所の今後

では、商工会・商工会議所が今後必要なくなるかと言うと、そうではない。逆に重要度がます時代になるのではないかと推察している。

今までの日本社会は、会社や組織にオールインワンして生計を立てるのが主な生き方だった。しかし、今後少子高齢化が進み、「働き手」の絶対量が減る中で、経済を維持するためには一人の働く量を増やす必要がある。要は副業が増える。

また、これまでに経験のしたことのないスピードで環境が変化する中で、人材の流動性も高まり、企業に雇用される以外の選択肢も多く生まれてくる。事業主として稼ぐことが現実的な手段として検討される時代が近づいているとも言える。

商工会・商工会議所には課題もあるが、「税務」「財務」「法務」「労務」その他マーケティングなど、これまでの経営に関わるあらゆるナレッジやノウハウの集積を考えると、今後の日本社会を支える、一つの社会基盤になる可能性もあるのである。