「中小企業白書」(その1)

「中小企業白書」とは

毎年4月下旬になると、中小企業庁から「中小企業白書」が公表される。
中小企業政策審議会の意見を聴いた上で、中小企業の動向に関する報告を国会に提出することが義務付けられており、中小企業基本法制定以降2018年版で55回目の年次報告となる。
行政の中小企業政策の根幹となるのが、この「中小企業白書」(と「小規模企業白書」)だ。2014年経済センサスによると全企業数380万者のうち、大企業は1.1万社(0.3%)・中規模企業55.7万社(14.7%)・小規模企業325.2万者(85.6%)であり、数の上では世の99.7%は中小企業である。日本経済の根幹をなす中小企業に、行政側がどうアプローチをしていこうとしているのかが書かれているのが「中小企業白書」である。
少し俗っぽく説明するのであれば、「予算ちょーだい。だって、今、中小企業ってこんな課題抱えているから、行政がフォローしなきゃね。何故なら、ほにゃららだからだよ」の「ほにゃらら」の根拠を示すのが「中小企業白書」である。

白書の役割

この予算がやがては補助金や制度融資の原資などになって、水滴のように落ちてきて中小企業を潤す役目を持つ。
中小を支援する商工会・商工会議所の経営指導員、中小企業診断士や税理士、中小専門のコンサルタントなどは大体、2月、3月になると国会の予算が承認されるかなどを確認しながら、「中小企業白書」などで今後の行政の動きなどを把握するのだ。
ちなみに、中小企業白書は概ね2部から4部くらいの構成に別れている。
第一部が中小企業の動向を統計的に分析している他は、その年ごとに行政が課題として考えるものを掘り下げていっている。毎回同じ観点を定点観測的に追うような構成ではない。
どんな内容が議論されているかは次回詳しく説明するが、例えば最近で言えば、「人手不足」や「生産性の向上」などがテーマとなっている。こうした課題を解決するために、「もっと中小企業もIT化を進めなければね。だからIT補助金を作ったよ」というような流れになる。

経営者にとって

補助金はあまり使い勝手のいいお金ではないが、実質的には返さなくていいお金でもあるので、数年後振り返った時に成長の礎となっている場合も多々ある。
普通に商売をしていて「中小企業白書」を意識している経営者はあまりいないだろうが、大きな流れを捉えた上で、利用できる補助金や制度がないかを調べてみるのもありだろう。最終的に使わないとしても、知らなくて使えないのと、知って使わないのであれば、経営の選択肢の幅も大分異なるだろう。
ただ、経営者としては本業に集中したいところでもあるので、そういった場合にフォローするのが士業やコンサルタントの一つの役割だったりもする。

次回は、ここ数年どんなことが話題となっているかを追ってみよう。