「商工会」と「商工会議所」(その1)

困りごとの相談先

人事・組織、マーケティング、生産管理、財務・資金調達・・・会社の経営には様々な困りごとがあるが、そんな時は公的な機関を利用するのも一つの手である。ただ一言公的機関と言っても、商工会・商工会議所、中小企業団体中央会、都道府県等中小企業支援センター、〇〇中小企業振興公社、〇〇産業振興公社、〇〇産業支援センター、よろず支援拠点 など様々な機関が存在し、どこに何を相談すればいいのか迷うところではある。

迷った場合はまず「商工会」もしくは「商工会議所」に相談するといい。各機関によってそれぞれ得意分野はあるのだが、この2つは地域の「総合」経済団体と言われ、簡単にいうと地域の総合病院のような位置付けだからである。

「商工会」と「商工会議所」の違い

ちなみにこの2つの組織はよく「商工会・商工会議所」と呼ばれるが、実は根拠法も管轄も異なる別組織である。だが、その性格は極めて似ている。何が違うのかと言うと、対象とする地域と事業者の規模の違いである。大雑把に言うと「商工会議所」は人の多い都市部を中心にあらゆる規模の企業まで面倒を見るのに対し、「商工会」は「商工会議所」が手の回らないそれ以外の地域の、主に小規模事業者を相手にしているというイメージだ。

成り立ちとしては「商工会議所」の方が古い。

そもそもは16世紀の西欧の都市の商工業者のギルド組織から派生していったもので、その都市(=地域)の「総合」的な経済団体として成立したものである。日本でも江戸時代から「町会所」という組織があり、その流れを一部うけながら、明治以降資本主義化が進む中で、渋沢栄一らが明治11年に「東京商工会議所」を作り、産業振興政策の要として広めて行ったのが「商工会議所」である。(詳しくは八王子商工会議所のHPに載っている記事が面白いので参照してもらうといい。)

一方、「商工会議所」があくまで都市を中心としたある程度大き目の商工業者の集まりだったのに対し、「商工会」は脆弱な小規模事業者や都市とまでは言えない地域に網をかるために、戦後、「商工会法」(昭和三十五年(1960年))によって広められたようである。

ちなみに、日商簿記をはじめとする検定試験や国際交流支援は「商工会議所」しかやっていない。ここら辺はある程度の規模が必要なことに加え、歴史的な経緯として都市の商工ギルドが都市間での交易を図るという目的を内包しているからである。

特色

「商工会議所」には、国のコントロールを受ける仏独系(大陸系)とあくまでも自主的な商工業者の集まりとして独立性を求める英米系の流れがある。日本はその両方のいいとこ取りをしたようで、半官半民の組織となっている。年間の予算を見ても、補助金が1/3、会員企業の会費が1/3、(検定試験などの)事業収入が1/3といった具合になっている。

補助金など国や自治体の施策を実行しつつ、地域を代表する企業体の連携組織としての顔も持つのが、「商工会・商工会議所」の特色である。

次回はこれらの組織が、具体的にどんな支援をしているのかに触れたい。

(参考)

区分 商工会 商工会議所
根拠法 商工会法 商工会議所法
管轄官庁 経済産業省 中小企業庁 経済産業省 経済産業政策局
地区 主として町村の区域 原則として市の区域
(商工会議所及び他の商工会と地区は重複しません)
1,660箇所(平成29年調査) 515箇所(平成28年4月現在)
会員数 約81万者(平成29年調査) 125万者(平成27年3月現在)
小規模事業者の割合 9割超 約8割
事業 中小企業施策、特に小規模事業施策に重点を置いており、事業の中心は経営改善普及事業 地域の総合経済団体として、中小企業支援のみならず、国際的な活動を含めた幅広い事業を実施。
小規模事業施策(経営改善普及事業費)は、全事業費の2割程度

全国商工会連合会「商工会と商工会議所の比較」より一部抜粋、改変