飲食店の経営

最近、自宅から駅へ向かう途中のうどん屋が無くなっていた。
場所は東京郊外とまではいかない中央線のある駅で、人通りも決して少なくない駅近徒歩1分の好立地の場所にあり、何よりかなり美味しいうどん屋だった。廃業の理由は直接聞いたわけではないが、美味し割に客があまり入っていなかったので、やはり経営状態が厳しかったのではないかと推察している。当初は、讃岐うどん一本で開業していたが、時間が経つにつれメニューが増え、ビールや日本酒の種類が増え、かといって居酒屋に振り切ったかといえば、くつろげるようなお店でもなかったのだった。

雇用保険事業統計 雇用保険事業年報 2017年

飲食店の経営は難しい。

厚生労働省「雇用保険事業年報」(2016年度)によると、(宿泊業と)飲食サービスの開業率は9.7%と全業種の中でトップである一方、廃業率も6.4%と最も高い。よく言えば新陳代謝が良いと言えるが、開店しやすく潰れやすいということだ。廃業率が10年間6.4%と変わらない場合、単純計算で0.936を10乗して100件中、51.6軒しか残らないことになる。もちろん開業率の方が高いから業種全体ではお店は増えていることになるが、経営が厳しい上に元気一杯の同業他社がどんどん参入し続けてくる環境であるとも言える。

飲食店は魔力のある業種である。

美味しいものは一人で食べても美味しいし、家族や気心のしれた仲間と食べたならさらに一層変えた難い思い出となる。飲食店を開くときは、そんな時間を共有できる場を作りたいという思いで始めることもあるだろう。だが、経営する側に回ったときは、かなり厳しい世界であるというのは覚悟しておく必要がある。美味しいものを提供することと店が繁盛することはイコールにはならない。たとえ世界一美味しいラーメンを1000円で作れたとしても費用が1000円かかっていたらタダ働きと同じとなってしまう。

ロブションというお店を知っているだろうか?
1食5万円はする世界最高峰の高級フランス三ツ星レストランである。しかし、ある高級飲食店専門のコンサルタントから聞いた話によるとお店単体としては赤字だとのこと。それでもやっていけているのは、運営する(株)フォーシーズのブランド戦略の一環なのだそうだ。

ブログの初回からネガティブな記事で申し訳ないが、飲食店を経営するのであればそれなりの準備と心構えが必要だということ。よく10年で9割の飲食店は潰れるとう話があるが、数字だけ見ればそこまでひどくはない。半分は生き残っているとも言える。難しいのは確かだが、成功している店はもちろんある。

必要なのは一時的な感情の高まりではなく、継続的に学習し、実践していく覚悟である。そして、そのお手伝いをするのが我々の仕事でもある。