【緊急特集!】中小企業のための、初めてのコロナ資金繰り対応①〜資金繰り対応の3本柱〜

リーマンショックを超える可能性

今回の新型コロナウィルスの感染拡大の影響で、世界レベルで経済環境が大きく変化しようとしている。新型コロナウィルスの影響で国内外問わずどこか大きめの金融機関が破綻でもすれば、一気に信用収縮してリーマンショックをも超える可能性がある。人も物も動けなくなりつつある中で、政府は経済の血流たるお金だけは回るように対策を打ち始めている。

中小企業診断士もここら辺の対策で各機関からかなり駆り出されているのだが、現場にいる知り合いによると積極対応している企業とのんびりしている企業とで二極化しているそうである。特にこの時期は年度末を経て、様々な支払とともに一時的にキャッシュインがある時期でもある。また、3月に経常が悪化しても、年間で見るとそこまで大きく数字として落ち込んでないようにも見えるため、危機感が薄い企業もあるようだ。

この状況を中小企業診断士としては全くスルーするわけにも行かないので、4月5日時点での国のコロナウィルスに対する経済対策について軽くご紹介したい。
今困ってなくても借りられるならばこのタイミングで借りられるものは借りておくべきだ。
今回の記事では、今何をしていいか分からない企業に、政府の新型コロナウィルスに対する経済対策にどのようなものがあり、具体的に資金繰りをどのようにすればいいかのイメージを持ってもらうことを目指す。

どこから情報を得るか?

世の中では様々な情報が溢れていて、結局の所どこを見ていいのかがわからない場合もある。まず、一番チェックすべきサイトは経済産業省の以下のサイトである。

様々なニュースやサイトで、中小企業向けのコロナ対策が紹介されることもあるが、全ての発信源はこのサイトになる。特にわかりやすいのは支援策パンフレットになるので、何をみたらいいかわからなかったらまずはこのパンフレットから確認することをオススメする。

いろんな融資や保証制度がどう当てはまるのかが一番分かりやすいので、上記のサイトも併せて紹介させていただこう。

とはいえ、経済産業省の特設ページだけでも情報がありすぎて何を利用していいのかが分からないかも知らない。また、情報は日々更新されていくため、今後の国の施策に対して何をしているのかを自分で解釈できるようになる必要がある。
よって、細かい話よりもまずは資金を得るための国のスキームを3つ紹介しよう。

コロナ資金繰り対策の3本柱①:融資(日本政策金融公庫・商工中金 等)

通常は、融資が必要な時には街の信用金庫や都銀へお願いしに行く。民間の金融機関は慈善事業ではないので、審査の条件も厳しい。一方、国や自治体の視点で見た時には、産業の育成だったり、雇用の維持だったり多少リスクをとったとしても社会的な安定性も重要になってくる。そうした政策的な観点で作られたのが、「日本政策金融公庫」や「商工中金」である。

今回の新型コロナウィルス感染拡大などは社会不安の典型で、社会的リスクが拡大した場合に金融面での中小企業を下支えし、企業を倒産から守る役目を果たしている。

新型コロナウィルスに対する経済対策ではまず、日本政策金融公庫の下の2つの融資制度を押さえておこう。

日本政策金融公庫 新型コロナウィルス感染症特別貸付
(通称:コロナ特貸)
マル経融資特別枠(国民事業のみ)
(通称:コロナマル経)
対象者

最近1ヶ月の売上高が対前年or前々年同期比5%以上減少
中長期的に業況回復&発展見込み

最近1ヶ月がの売上高が対前年or前々年同期比5%以上減少
貸付限度額 国民事業:別枠6,000万円(無担保)
中小事業:別枠3億円(無担保)
別枠1,000万円
(本枠を併せて3,000万円)
貸付期間 (据置) 設備資金:20年以内(5年以内)
運転資金:15年以内(5年以内)
設備資金:10年以内(4年以内)
運転資金:7年以内(3年以内)
貸付利率 (*1) (*2) ●3000万円(国民)/1億円(中小)以内部分
 当初3年間:災害金利(基準)から▲0.9%(*3)
 3年経過後:災害金利(基準) 1.46%
●3000万円(国民)/1億円(中小)超部分 災害金利(基準)
当初3年間: マル経金利(1.21%)から▲0.9%
3年経過後:マル経金利(1.21%)  
※無利子化対象外

(*1)金利は国民事業(2020/3/11現在)/(*2)借換の場合は低減利率適用不可/(*3)低減利率適用部分については特別利子補給制度と併用可(一部実質無担保)

当初3年間に限定はされるが、0.31%~0.46%くらいの金利しかつかない。100万円借りて、3〜5千円と言う金利は冗談のようでもある。さらに条件によっては、一部実質無担保にもなる。
条件に当てはまるのであれば、積極的に活用しない手はない。

コロナ資金繰り対策の3本柱②:保証(日本保証協会)

2つ目は保証である。
政府系金融機関は金利面などでは有利なものの、条件の柔軟性や融資のスピード感は民間の金融機関の方が使い勝手がいい。そういった意味で、融資は民間のものを使うが、保証だけ政府系組織が担当するスキームも存在する。
「保証」とは何かというと、返済できなくなった場合に代わりに弁済を保証してくれるということである。この制度があれば、金融機関は融資を実行しやすくなる。
今回の経済対策では、日本保証協会が行う以下の3つの仕組みを押さえておこう。

  • セーフティネット保証4号
  • セーフティネット保証5号
  • 危機関連保証

第4号と第5号の違いは大雑把に言うと4号が「地域指定」なのに対し、5号は「業種指定」と言う違いがある。地域指定というのは、災害などが起こった時に「この地域限定で」と指定するもので、業種指定というのは、例えば「飲食業・宿泊業限定で」と指定するものである。その二つともに当てはまっていたら、両方使用することが可能だし、危機関連保証も条件次第で併用が可能だ。

  第4号 第5号 危機関連保証
対象地域
対象業種
2020/3/2 全都道府県指定 国が特に重大な影響が生じている業種を指定(*1) 国が指定した危機時に、全国・全業種を対象
対象者 売上高が前年同月比▲20%以上減少 等の場合 売上高が前年同月比▲5%以上減少 等の場合 売上高が前年同月比▲15%以上減少、かつ、
その月を含む3ヶ月間が前年同期比▲15%以上減少等の場合
保証割合 別枠100% 別枠80% 別枠100%
保証枠 一般枠とは別枠で最大2.8億円(4号・5号で合算) 左に同じ 別枠で最大2.8億円

ところで、注意をしなければいけないのは、保証を利用するためには「保証料」が必要になる点だ。また、万一返済ができなくなった場合に、信用保証協会は融資元の金融機関に対して一時的に借入金を立て替えた上で債権を引き継ぐ。「保証料」はあくまで手数料であって、勝手に保険料のように誤解して、代わりに払ってくれてラッキーとわけにはいかないのである。
保証料に関しては今回のコロナウィルス対策に応じて、地方自治体が援助してくれるパターンもある。信用保証協会は都道府県毎なので、全国一律というわけではない。住んでいる地域の信用保証協会毎にどんな対策を打っているかは別途調べてみる必要がある。

コロナ資金繰り対策の3本柱③:助成金・補助金

助成金・補助金は実質的には返さなくていいお金だ。(名目上は利益が出たらその分で返済することになっている。)
このスキームも今回の新型コロナウィルス対策として様々に拡充されている。
ただ、返さなくて良い分申請書類が多く、申請には審査が必要だ。また、仮に審査が通ってもすぐにはお金が下りない。事業実施後、報告書を上げてようやく入金される仕組みで、直近の資金繰りに対応するのには向いていない。

今回の新型コロナウィルス対応では、経済産業省が企画している生産性革命推進事業において、「優先的な支援」「申請要件緩和」「遡及適用」などある程度柔軟な対応が図られているが、基本的な枠組みは変わらないのでやはりあまり使い勝手は良くない。

今回の新型コロナウィルス対応で比較的有力なのものとしては、厚生労働省の管轄の「雇用調整助成金」がある。
この助成金は、社員を解雇しないで頑張っている企業を助成金で下支えする目的である。気をつけなければいけないのは期間で、3ヶ月で申請を出すと助成期間が終了してからしか受け取れないので、資金繰り面を考えるなら、面倒でも1ヶ月毎に申請をし直す方が良いらしい。
ここら辺は社労士さんの領域なので、具体的な手続きは最寄りの社労士さんに問い合わせてもらいたい。

最後に

参考になっただろうか?
保証にしても融資にしても、あくまで返済が前提となる。仮に融資が成功してキャッシュがあると勘違いしがちだが、あくまでもこれらは返すべきお金だと思ってしっかり管理する必要がある。
また、資金繰りに以外にもやれることは多く、客がこないならこないなりに今しかできないことをしっかり時間をかけてやる方針で頭を切り替えていくべきである。

【免責事項】
ここに掲載した情報は2020年4月5日時点の情報です。今後、情報が更新される可能性があることを予めお断りしておきます。また、政府の資金繰り対策は主に中小企業以下の規模の事業者に対するものであり、その条件にあてはまるかは別途確認が必要です。
本記事の内容をもとに何らかの損害が発生した場合でも補償等には一切応じられません。