大浮世絵展〜歌川国芳は、浮世絵界の板垣恵介である

大浮世絵展〜江戸東京博物館〜

年明け、両国の江戸東京博物館でやっている「大浮世絵展―歌麿、写楽、北斎、広重、国芳 夢の競演」を観にいく。サブタイトルにあるように「喜多川歌麿」「東洲斎写楽」「葛飾北斎」「歌川広重」「歌川国芳」を特集している。期間は、2019年11月19日(火)~2020年1月19日(日)。

やはり東京にいるとこういう展示が1時間くらいで観に行けるのは嬉しいところ。
芸術に理解も造形もないが、感じたことを語るのは自由。簡単に感想を。

喜多川歌麿

美人画で有名な絵師さん。サイトの紹介によると歌麿の真骨頂は「女性の一瞬の表情をとらえて、そこに気持ちや感情を込める点にこそある」のだそうだ。

着物。髪型やその結い方。佇まい。所作。余計な情報がないシンプルな構図。

個人的には、遊女が来た手紙を一生懸命読んでいる絵が印象深し。今で言えば、好きな男子からLineが返ってきて吸い付くように読むようなそんなストーリーが思い浮かぶ。同時に遊女でも文字を普通に読めてたんだなぁと、感慨。

「巧みな似顔絵表現によって、女性に抜群の存在感を与えることに成功している」との記載があるが、正直女性の顔は皆同じに見える。浮世絵界のあだち充。

東洲斎写楽

役者絵で有名な絵師さん。当時最も勢いのあった版元(プロデューサー)蔦谷重三郎に見出され、1794〜95年の約10ヶ月間に145点の作品を残しただけで消えてしまう。阿波候の能楽者「斎藤十郎兵衛」との説が強いが、謎。消えた理由も諸説あるが、「あまりに真を画かんとて、あらぬ様にかきしかば、長く世におこなわれず、一両年にして止む」(大田南畝)とのこと。要は、役者の特徴をとらえてデフォルメしすぎて、役者からも観客からも嫌われたというのが実情のよう。浮世絵界の新沢基栄(「ハイスクール奇面組」)。

葛飾北斎

世界で一番有名な画家の1人と言っても過言ではない。90歳まで生きて生涯3万点以上の作品を残しながら、「天我をして五年の命を保たしめバ、真正の画工となるを得べし」(天が後5年生かしてくれたら、本当の画家になれたものを…)と言って亡くなる。「富嶽三十六景 神奈川沖裏」のようなダイナミックな風景画が有名だが「北斎漫画」や「鳥獣戯画」のように普通に楽しい作品も沢山残している。後で説明する広重と比べると、格好良さよりもユーモアを重んじる気質を感じる。写実的な絵や格好いい絵を描こうと思えば描けたが、解釈や演出により絵を歪めることに躊躇しない。躊躇しないどころか、歪め方にこそ本質ではないかというところを突き詰めた印象。浮世絵界の手塚治虫と言っていいだろう。

歌川広重

最もシャープで格好いい絵を描く浮世絵師。ドローンで空撮でもしたんじゃないかと思うような大胆な構図は北斎とは別の意味でダイナミック。版画の刷り技術の発展もあったのかもしれないが、「広重ブルー」と言われる深い藍色からのグラデーションが美しい。個人的にただただカッコイイなぁと見惚れる部分もある反面、北斎と比べると少し冷たさも感じる。漫画には色がないので単純比較は難しい画力で言えば、大友克洋か。

歌川国芳

英雄画や擬人画が有名。特に三枚綴りのワイドな絵は、「横長の画面いっぱいに巨大なモチーフを配して、シネラマ映画を見るよう…」は、本当にその通り。国芳は風景よりも、人と、人に対峙する動物(魔物)の絡み合う構図。ルール無用。今回の展示会で一番の発見となった。

浮世絵界の板垣恵介(「グラップラー刃牙」)か、ケモナーな部分は板垣巴留(「Beastars」)と言っていいだろう。

 

まぁそんな感じで、少し無理やり感も否めないが、今の絵師(漫画家)で言ったら誰になるかな?などを想像しながら楽しんだ展覧会でした。

それではまた。