「サブスクリプション」時代を生き抜く
法人化すると期末を年末に設定することは少ないが、それでも年の区切りというのは費用を見直すいい機会になる。特に気をつけたいのは、サブスクリプション的な支出である。
昔であれば、雑誌や新聞などの定期購読くらいしかなかったものが、昨今のIT技術の発展に相まって至るところで定期的な支出が発生するようになってきている。これは、アカウントごとにサービスを管理し、課金するIT技術がベースになって実現されている。1個1個は数百円程度のものからあるが、それらが積みあがると大きな支出になるし、今の時代、本当にそのサービスが必要なのかを定期的に見直していかないと、価値のないサービスに費用を垂れ流すことにもなりかねない。
見直しの進め方
定期的な支出が発生するものを見直す場合、いくつか注意する点がある。聞けば至極当然のことばかりだが、書き留めておく。
① まずは額が大きいものから検討する
見直しにも時間がかかる場合がある。年末年始の限られた時間で見直しをする以上、効果の高いものから手を付ける。言われれば当たり前のことだが、人間はどうしても目についたものから手を付けがちである。
② 年間契約となっているものをスケジューリングする
月額で引き落としになっているものは比較的意識に登りやすいが、サブスクリプション契約は年間契約・自動更新的なものも多い。年末年始のタイミングで見直すのはいいが、大抵の場合契約が数ヶ月残っているので今契約を切るのはもったいないという判断をしやすい。それはそれでいいが、しっかりと契約の更新日の一月くらい前には見直しできるよう、カレンダーなどにスケジューリングする。特に自動的なリマインドしてくれるようなスケジューラを利用しておく。
また、実際の解約は先送りしてよいが、解約をするか否かの判断はこのタイミングでしておく。数か月後に判断すればいいやと思っても、実際になってみても、使っていたサービスのデータの移行とかが間に合わずに実質現状維持を選択することになるからだ。
③ 仕分け項目を分ける
資金繰り表を作っている会社であれば、それ自体が出金のサイクルを明示してくれる。だが、できないような資金繰り表がない状況であれば、定期性の処理は仕分けの項目を分けておいても良い。最近のクラウド会計ソフトは取引にタグを埋め込む事ができる場合もあり、そうした機能を利用するのも一つの手である。
何れにせよ、キャッシュアウトがいつ発生するのかが一目で見てわかるようにルール化したい。
見直しの観点
続いて実際の見直しに入ろう。
① 契約そのものを無くす
まず一番はじめに検討しなければいけないのは、契約そのものを無くせないかである。
契約しているサービスがどんな価値を生んでいるのか?契約した頃は重要だったサービスも数年経ってみると案外形骸化している場合もある。物理的なところでも車や駐車場、倉庫などその費用を払い続けることでどれくらいの価値を生んでいるかをシビアに見積もってみよう。会計上の節税を狙ってやっている施策なども法制変更などで無駄や効果がなくなっているものはないかも確認しよう。
②代替手段を探す
より安価、高品質、高付加価値なサービスが生まれていないか?代替手段がないかも検討する。
通信容量なども数年経つと半額以下になっていることもある。当時はそのサービスが一択しかない場合もあるが、案外時間が経っているといろんなサービスが生まれているものである。特にストレージ容量は、本当にそのデータをクラウド上に置き続ける意味があるのかを見直してみる。
また、デファクトスタンダードになっているサービスがないかもチェックすべき観点だ。デファクトスタンダードになっている場合、同じ仕組みに乗る事でデータの連携などが簡単にできるようになったりするものである。
③簡素化する/単発利用にする
最悪同じサービスを使い続けるにせよ、契約の詳細を見直し、よりシンプルで必要な機能に限定できないかも検討する。
サブスクリプションの悪いところは、何もしないこと…現状維持が、契約の維持を意味する事である。ここら辺はスポーツジムの会員が3日坊主になっているのに契約だけは残り続けている姿に似ている。しかし、3日坊主なら辞めるという選択ができるが、月1~2回くらいしか使用しない場合が最ももったいない。なぜなら1回あたりの利用料を計算すると、単発で利用した料金の方がよっぽど安上がりになるからである。というわけで、一見割高でも単発利用にできないかを検討する。
仕組み化する
こういった記事を書くとサブスクリプション=悪のような立場になりがちだが、利用頻度の多いものに対してサブスクリプションサービスを利用すると費用の削減にもなるので、本当に必要なものは積極的にしない利用しない手はない。
重要なことは、費用対効果である。
経営の観点でサブスクリプションを眺めた場合の課題は別のところにあって、一度行った契約を定期的に評価する仕組みを持っているかいなかが重要である。手続きや評価コストも馬鹿にならない。何も考えなければ、現状意識が実質的な選択肢となる。結局こういう話は、コストをかけて費用対効果を定期的に評価する仕組みをつくるか作らないかの問題である。
年末の経理を細々とやりながら、浮かぶ思いを書き付けてみました。
おこがましいかもしれないですが、日々経営に頭を悩ませる経営者の人に向かって記事を上げて1年経ちました。
皆様、よいお年を