付加価値とは、何か?②〜生産性は売上が前提となる〜

前回を少し復習する。付加価値とは

  •  経費も含め内部(自社)で作り上げた価値
  • 市場競争で価格は制約を受けるため、付加価値を高めるという事は、差別化して価格競争力を高めること

を学んだ。

これらを踏まえた上で、今日は「生産性」とは何かについて検証してみる。
生産性は、単純には

「生産性 = Output(産出量) ÷ Input(投入量)」

という式で表される。
付加価値生産性分析では、このOutput(産出量)に付加価値額を利用する。
付加価値が内部(自社)で作り上げたる価値だとすると、その価値を作り上げるのに何をどれだけ投入(Input)したかをこの指標で見ることになる。

労働生産性

まずは、労働生産性の式を見てみよう。

(付加価値)労働生産性 = 付加価値額 ÷ 従業員数

その付加価値を作るために、何名の従業員が投入されたかを表す。
また、式からも分かる通り、労働生産性とは、一人あたりの付加価値額でもある。

仮にオレンジジュース50万円の付加価値を作るのに4名の従業員が携わっていたとすると、労働生産性は、50万円 ÷ 従業員数4名 = 12.5万円/人となる。
もしこれを2名で生産できる体制にすれば50万円 ÷ 従業員数2名 = 25万円/人となり、生産性は2倍になる。

だが、通常は単純に人数を減らしただけでは労働生産性は上がらない。人一人の作業時間や作業効率には限界があるからだ。ではどうするかというと、人の教育や業務フローの改善、レウアウト変更、設備投資やシステム投資などで人を減らしても回るような仕組みに変更するのである。

ちなみに、「日本の1人当たり労働生産性は、81,258ドル。OECD加盟36カ国中21位」(2018年)(公益財団法人 日本生産性本部調べ)であるという。その一因に、社会全体としてシステム化が進んでいないとも言われている。例えば、持続化給付金をオンラインで受けつけてもその確認作業を人でやる事で、全然処理が進まないとか、そんな無駄の多いイメージだ。
また、判子をもらうためだけに往復2時間もかけて出社するとか、決裁を取るのに紙が社内を回り続けているとか、それ自体は価値を生まない作業に無駄な労力を取られるような状況が生産性が低いというのは、実感としても理解する事ができるだろう。

この指標を分析することで、そうした課題を洗い出す事ができるようになる。

資本生産性

資本生産性ではその付加価値を作るために、どれだけの資本を投入したのかを測ることになる。

(付加価値)資本生産性 = 付加価値額 ÷ 総資本

例えば総資本100万円で付加価値50万円のオレンジジュースを作る会社と、総資本50万円で同じ付加価値50万円のオレンジジュースを作る会社があったら、50万円で作った会社の生産性の方が倍高いというのは想像がつく。
総資本という言葉だとしっくりこないかもしれないが、100万円の投資で建てた工場と50万円の投資で建てた工場で、付加価値額が一緒なら、より安い資本で作り上げた方の資本生産性が高いという風に置き換えても良いだろう。

資本生産性はある種の投資効率を探る指標とも言える。

生産性は売上が前提となる

ところで、労働生産性にしても資本生産性にしても、「生産性を上げる」という言葉を使うと、如何にInput(投入量)を減らか、という方向に発想が向きがちだ。
しかし、Output(付加価値額)を増やすことでも実現する事もできる。

付加価値とは、差別化して価格決定力を上げることにより実現できる価値でもある。
そのために、ブランド化を図る、他社には模倣できない機能を付与するなどで、付加価値自体を高めていく方策も同時に検討していくべきだ。そうでないと、生産性の議論が人員の削減、業務効率化や設備投資・システム化投資という手段だけに収斂させていくことになる。

付加価値とは本質的には、

 売上高 – 外部購入費用

であって、売上高が前提になっている。
生産性を上げるために単に投入量を減らせすための手段が目的化すると、業務の効率は上がりました。でも生産性は上がっていません。何故なら、商品・サービスは売れていないから、などという結果にもなりかねない。

要するに、生産性を上げるというのは、

 (創意工夫をもとに差別化して)売れる商品・サービスを効率よく提供していく

ということを表しているのである。

生産性は、なかなか経営の奥深さを感じさせる指標である。