飲食店の原価構成モデル(FLR分析): 美味しいラーメンが作れてもラーメン屋は経営できない

美味しいラーメンが作れてもラーメン屋は経営できない

以前も書いたが、飲食店の開業率は9.7%と全業種の中でトップである一方、廃業率も6.4%と最も高い。(厚生労働省「雇用保険事業年報」(2016年度))。飲食店は非常に馴染み深い業種だが、経営者の立場になって生き残るのは並大抵の事ではない。
もし、美味しいラーメンを作れるからと言って、ラーメン屋を開業しようとする人間がいたら、踏み出す前に一歩踏みとどまって欲しい。
売上から原材料費や人件費、家賃などを引いた後に利益が残らなければ、どんな美味しいラーメンを作れても商売は続けていく事ができない。まずは、継続的に利益を上げるための仕組み作りが欠かせない。

そのために、飲食店の原価構成というものを知っておく必要がある。

飲食店の原価構成モデル: FLR分析

我々コンサルタントは飲食店の支援に入ることもあるが、全てが飲食業出身とは限らない。
また、一言で飲食店といっても、居酒屋と喫茶店、あるいはお寿司屋さんと洋食屋さんではオペレーションがまるで違うし、フロアと厨房、あるいはチェーンの店舗拡大などやっていたのかなど働く位置によってもやることは千差万別である。経験からだけでできるアドバイスというのは限界がある。
そんな我々が、飲食店の経営を評価するときに使うツールの一つに「FLR分析」である。
FとLとRはそれぞれ

  • F=Food(原材料費)
  • L=Labor(人件費)
  • R=Rent(家賃)

を意味する。そして、FLRコストを売上の70%以内、その他の費用を20%以内に抑えて利益を10%以上出すというのが、飲食店を経営する上での原価構成モデルとなる。
これは、ラーメン屋でも焼肉屋でも寿司屋でも洋食屋でも、飲食店なら一律に使う事ができる。
F(原材料費)とL(人件費)とR(家賃)を合わせて70%なので、例えば、

F(原材料費)40% + L(人件費)20% + R(家賃)10%でも良ければ
F(原材料費)30% + L(人件費)30% + R(家賃)10%でもいい。

飲食店の種類によっても原価構成は異なるが、全く同じ種類の飲食店でも立地や規模によって大分構成が変わってくる。こうしたものを合わせて、だいたい上手く言っている飲食店の原価構成を分析した時に、FLRコストが70%くらいで抑えられるというのが飲食業界の経験則的モデルなのである。

3ヶ月で『儲かる飲食店』に変える本」より

ここら辺は、「3ヶ月で『儲かる飲食店』に変える本」(日本実業出版社/河野祐治 著)に詳しく書いてあるので、参考にしていただければと思う。

※人件費に関しては、役員報酬・法定福利費・福利厚生費・求人費・教育費併せ、粗利益の50%以内という目安などもある。

ビジネスを俯瞰する

FLR分析は、確定申告をしていれば既に数値は揃っているし、自分で作るのが手間であれば税理士にお願いする手もある。ただ、結局FLRコストが70%を超える場合にはどこを削るのか、あるいはどう売上を増やすのかは経営者が考えなければいけない領域なので、自分で少し時間をとって格闘するというのをオススメする。

ちなみに筆者も飲食店の支援に入る事が多いが、決算報告書に目を通す飲食店経営者は案外少ない。銀行が出せと言っているから作っているくらいの感覚だったりする。

飲食店の経営は、仕入れ・料理・後片付けなどの厨房業務、注文・配膳・会計などのフロア業務、人の管理、集客、保健所や税務署の対応、地域の会合など、24時間365日体力も精神力もかなり消耗する商売なので、どうしても経理は税理士任せになってしまう場合が多い。
そんな中自分で経営分析まで行うのは、マラソンを走りきった後にもう一踏ん張りするのに等しく、かなり厳しい事でもある。
それでも、それだけ一生懸命やっているのに儲けが出ないのは構造的な問題を抱えている場合が多い。
そんな時は、一歩引いて自分がどんなビジネスをやっているのかを俯瞰してみよう。

それができないのであれば、一時的にでも信用のできるコンサルタントを使うというのも一つの手だ。
最終的に意思決定をするのは経営者の仕事だが、そのための情報、新しい知見、考え方を提供するのはコンサルタントの仕事である。