キャッシュレス化と金融機関の終わりの始まり

日本はいまだに現金志向で、2016年時点でキャッシュレス比率は20%しかない。キャッシュレス化が進む地域は、治安が悪いのが一つの要因だったりもするので、安全で信頼性の高い日本社会の良さとしても捉えられなくはないが、現金を取り扱うということは非効率であり、無駄が多い。
社会全体でみた場合は、ATMにお金を補充する、現金を管理する、レジを閉めるというのは非常に手間がかかる業務だ。現金取扱コスト(ATM維持、取扱人件費等)は一説によると毎年数兆円かかっているとも言われる。
そもそもお金を管理すること、それ自体に価値はない。

キャッシュレス・消費者還元事業

あまり目立ってはいないが、実は今政府はキャッシュレス化を全力で推進している。

消費増税に併せて、2019年10月から9ヶ月間およそ2800億円の予算をかけて、「キャッシュレス・消費者還元事業」が行われている。この政策によって何ができるようになるかというと、お店で品物を購入すれば、5%ポイント還元・割引される。

PayPayなどを使ったことのある人は100億円キャンペーンを体験したことがあるので、流石に20%キャッシュバックされるようなインパクトはないが、同じように5%分の金額が何らかの形で返ってくる。今年の10月から消費税が10%になるが、キャッシュレス決済で9ヶ月間は消費税5%分で買えるようなイメージである。

ただ、これはどのお店でもそうだという訳ではなく、事前に登録してあるお店だけで実施できる措置だ。

 お店側のメリット

この政策は消費者向けだけではなく、実際にキャッシュレス決済を行うお店側にも恩恵がある。
まず、楽天やPayPay、AirPayのようなキャッシュレス事業者を通して、加盟店登録を行うと

  • キャッシュレス端末が無料で設置できる
  • 加盟店手数料が3.25%以下となる
  • 加えて、期間中は1/3を国が補助してくれる

のだ。
お店側はどのようにこの制度を使えばいいのだろうか?
具体的には下記URLに載っている、キャッシュレス決済業者に期限までに電話すれば良い。
https://cashless.go.jp/franchise/index.html

クレジットカードもキャッシュレスなので、今までかかっていた加盟店手数料も3.25%までは引き下げ可能である。
もちろん、事業期間(2019年10月〜翌年6月)が終わるまでの措置だが、一度引き下げた手数料を上げるのは現実的には厳しいので、今後これを上回ることはないだろう。個人的にはまだ高いと思うのだが、それでも日本のキャッシュレス化を阻害する要因の一つは緩和されるのだろう。

金融機関の終わりの始まり

キャッシュレス決済業者としての旨味は何かと言うと、顧客のマーケティング情報を獲得できるところである。
カードやアプリを登録するにあたり、年齢・性別・住所・職業などの個人情報と共に消費行動情報を紐づけて管理し、それを新たな商品にできるのである。

個人情報と消費情報を握られるのは、消費者としては気持ち悪い感じもするが、たぶん一番影響を受けるのは金融機関だ。
人がどれだけの消費できるかというのはある種の信用情報であり、またどこの店舗を通してどれだけの売上があるのかを捕捉できると、今まで金融機関が担っていた融資や決済機能を代替できるようになる。

ここからは妄想でしかないが、やがてこの決済に仮想通貨が紐づいて世界通貨的なものがいつの間に出来上がいるのではないかと思う。その時、その通貨は独立的で自由なものでいられるのか、あるいは一部の国家的なものに制御されているのかは非常に興味深いところである。