経営から見たシステム導入工程(プロセス)4:移行&リリース、保守&運用

いよいよ最後の工程である。

移行&リリース

 通常リフォームなり改築なり、施工が終わると最終的に出来上がった建物の「引き渡し」が行われる。
 しかし引き渡しただけでは、生活がすぐに始められるわけではない。実際にその建物が使えるようになるためにはリフォームの過程で邪魔だった家具とか生活用品が運び込まれる。荷物を運び込んで、使えるようにして、そして引き渡される。
 これと同じことがシステムでも行われる。
 まずは、マスタデータをはじめとする各種データを移動する必要がある。
 システムを全く一から作る場合は移行作業がない場合もあるが、大抵の場合は以前使っていたシステムから顧客データや取引明細、関連する自社の部署などのデータを持ってくる必要がある。
 次は本番環境で実際に使えるようにする作業が必要になる。これを「リリース」と言い、いわゆる「引き渡し」作業が行われる。釣りで言うところのリリースと言葉は一緒で、出来上がったシステムを開放することからそのような名称で呼ばれる。カットオーバーと呼ぶこともある。
 こうして、データと機能が一通りそろって、ようやく完了である。
 古いシステムは稼働を停止し、新システムでの運用が始まる。

保守&運用

 最後に「保守&運用」である。
 建物のリフォームが済んで、日々の生活そのものやその中で起きるメンテナンス作業に相当する。単純に電球が切れたとか、壁紙が剥がれたとか、場合によりどこかの蛇口の水の出が悪いとか、そんな事象に対する対応をする。使い勝手とかそういうことが問題化する場合もある。
 これまでリフォームを例にしてきたので、生活の瑣末な問題のように捉えられてあんまり重要に見えないが、ここでは飛行機のようなものをイメージしてもらった方がわかりやすい。飛行機を飛ばすということの背景には、凄まじく重要な検査や訓練が必要であり、そうしたものの合わせた活動の集積が「保守&運用」である。
 「保守・運用」は並べて呼ぶことが多いが、やっていることは全く異なる。
 「運用」は、そのシステムを使って実際に行われる仕事(=サービス)のことである。飛行機を建造しただけでは、運行はできない。実際に作られた機体を人が動かし、CAさんの顧客サービスなどが組み合わさって初めて、意味が生まれる。引き渡されたシステムを、現場の人が使って、なんらかの価値を生み出すこと。それが「運用」である。
 一方、保守はメンテナンスのことである。
 障害が起きないように監視し、発生した時は運用に影響を与えないように速やかに暫定対応を行い、追って根本的な対応を図る。保守チームが継続的に体制を組んで、安定的な運用を担保するのが「保守」である。
 さて、以上がシステム導入の工程である。
 なんとなくイメージを掴んでいただけただろうか?
 次回は、最後にシステム開発に関するまとめをお伝えしよう。